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24にしおりをはさみました!
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24
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バイトに勤しんでいる間は余計なことを考えなくて済んだ。夕方からのシフトとは言え、休日だからか客足が途絶えることがない。今日は22時までだったので、6時に30分だけ休憩がとれた。バックヤードで店のまかないを食べていると、吉田という一つ上の仲がいい先輩もやってきた。
「よう、おまえ今日何時まで?」
「10時時までっすけど」
「お。俺もなんだけどさ、バイト終わり何か予定ある?」
「いや、帰って寝ねるだけっすね」
「よし、じゃあちょっと付き合えよ」
「何すか?」
先輩がスマホをいじって何かの画面を出すと、俺に見せてきた。
「これ、一緒に行かね?前からすっげー気になってんだけど、なかなか一人で行く勇気がなくってさー」
「クラブイベントっすか?」
パッと見た感じ、夜のイベントっぽかったが、スライドしていくと何だかクラブイベントとも違うようなことに気づいた。
「フェティッシュイベントっつーの?SMとかそういうエロいショーが見れんだよ。おまえ最近彼女と別れたんだろ?パーッと非現実な世界に飛び込んでみねぇ?」
フェティッシュって、聞いたことがある。すごく、身内の口から。
過去のイベントの写真なのだろうか、全身ラバースーツのやつとか、鞭持った女の人とか......縛られてる人もいた。
これって......
スライドしていくうちに、すごくよく知っているはずなのに、見たことないような姿を発見した。
白い着物の上から赤い縄で縛られている、それは、兄の姿だった。
「なー、どうよ?あ、ちょっと普通のイベントより高いけどさ、こないだスロットで当てたし、奢ってやるからさ!行こうぜー」
スマホを先輩に返す。
見てはいけない、行ってはいけない、そう思った。
「そうそう、このすんごい美人さ、男らしいんだよな。こないだ俺の知り合いがイベントで見たらしいんだけど、まじで美人で、キスがめっちゃ上手いんだって!女には絶対触らせねぇけど、男だったらキスでもおさわりでもオッケーなんだって。おまえ、傷心慰めてもらえばー?」
嫌だ。
そう思った。俺の兄さんだ。優しい兄さんが、そんな、そんなことするはずが......
「行くっす......」
気づけば、返事をしていた。
「おっ、わかってるぅ!よーし、やる気がみなぎってきた!ちゃちゃっとバイト終わらせっぞー!」
そう言うと先輩はまかないを掻き込んで、意気揚々と店に戻っていった。ちゃちゃっとやったところでシフトで決められた終了時刻は早められないのに。
「兄さん......」
兄さんは、好きであんなことしているのだろうか。
そりゃ、世の中にはいろんな性癖の人がいることくらいわかっているけど。でも......
何度か見たことがある兄の写真からは、とてもそんな風には見えなかった。
母が死んで、気づいた頃には全てが変わっていた。
父の仕事、兄の様子。
俺は子供で、その変化に気づくのが遅すぎた。
この異常な家族に、俺も引き込まれてしまうのだろうか。
......それでもいいのかもしれない。兄の側にいられるのなら。
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