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桃ちゃんが決めたらしいこの店は人気らしく、店内はすげぇ賑わっていた。その客のほとんどが女で、カップルも多い。そこに男6人で入れば悪目立ちするのは当たり前だ。
店員さんが予約していた席まで案内してくれる。桃ちゃんの後ろを美馬さんが歩き、その後ろに俺と拓海。それから歩、リカちゃんと続く。
内装を見て騒ぐ桃ちゃんに周囲の視線は集まり、平均よりもだいぶ大きな美馬さんを見てそれは固まる。
前から順番に視線が移っていく様子を感じた俺は、それが最終的にどこに行くのかわかってため息をついた。
みんなの視線はまず歩にいく。金髪のくせに、今日も部屋着のくせに。そしてそれは最終的にリカちゃんにいくんだ。
後ろの2人は、見られてるからって気を遣うヤツらじゃない。
「お前の金髪ってやっぱり目立つのな」
「は?てめぇのエロ顔の方が目立ってんだろ。離れて歩けよ」
「エロ顔って言うな。色気って言え」
「自分で言ってんじゃねぇよ変態。童顔とエロ顔の両方とか救いようねぇな」
周囲の視線を気にせず、マイペースに会話を続ける兄弟から俺と拓海はそっと距離をとった。席に着くまでこいつらと話すもんかと足を早める。
ぴったりついて歩く俺たちに気づいた桃ちゃんが振り返り、不思議そうに首を傾げた。
「あら?どうしたのそんなに急いで」
「あいつらと一緒だと思われたくない」
あいつら、と指したのは少し後ろを歩く2人。ムスッとした金髪と爽やかに笑ってる黒髪だ。今は、リカちゃんが歩の肩を抱き寄せて遊んでいる。
いっそ入り口すぐの席だったらよかったのに、とさえ思ってしまった。
なんの嫌がらせか、案内された席は店の1番奥にある個室だった。個室とは言ってもカーテンで仕切られただけの空間に俺の気持ちはまた落ちる。
「リカ、あんたは奥よ」
「はいはい」
当然のように奥に座らされたリカちゃんが、これまた当然のように俺を呼ぶ。それを無視しようとしたら歩に突き飛ばされた。俺の身体を受けとめたリカちゃんが嬉々として隣に引きずり込む。
「歩!!!てめぇ何すんだよ!」
「うっせぇな。お前が横にいないとそこの変態が拗ねるだろ」
リカちゃんの前に座った歩が2人の間に灰皿を置いた。席について即タバコを咥える。逃げようともがいても俺がリカちゃんに敵うことはなく、しかも何を思ったのか隣に美馬さんが座ってしまって身体を離すこともできない。
歩には相手にされず、かといって美馬さんを押しのけて逃げることも出来ず、俺は黙って座るしかなかった。
美馬さんが注文を済ましてくれ、程なくして俺たちの前に料理が並ぶ。もちろん車で来たリカちゃんはノンアルコール、俺も拓海もそして歩もだ。てっきり酒を頼むかと思った歩が飲まないことに驚いた。でも隣のリカちゃんが何も言わずに笑ってたから、歩なりに考えてるんだと思う。
タバコは良くて酒が駄目ってのはよくわかんないけど。タバコなら咄嗟にごまかせるからなのかもしれない。
「豊さん、エビフライと俺のトマト交換してあげる!」
拓海が割に合わない提案をすれば
「ありがとう。拓海君は優しいな」
美馬さんはなぜか嬉しそうに喜ぶ。
「歩ちゃん!ダメよまたグリンピース避けてるでしょ」
桃ちゃんが歩に注意すれば
「今日は食べたくない気分なだけ。それより桃さん次は何飲みます?」
上手くかわした歩が桃ちゃんにメニュー表を渡す。
そんな中、俺の腰に手を回したまま空いた左手で箸を握るリカちゃんを横目で盗み見る。
ふっとリカちゃんの口元が緩んだ。
「はいどうぞ。見つめるほど食べたかったんだろ?」
聞いてくるリカちゃんを俺は無言で睨んだ。ついでに回されたままの手を抓る。
「違う!もうわかってんだから早く言えよ!!」
リカちゃんは俺が何を聞きたいか、なんで怒ってるかわかってる。それなのに自分から言わないのはただの意地悪だ。
「続きって何が聞きたい?」
顔には「本当はわかってる」と書いてるくせに、簡単には教えてくれない。けれど、この展開はもう十分に慣れている。
そして忘れちゃいけない。今日の俺は冴えてるんだ。
「リカちゃん、もしかして桃ちゃんと一緒に住むのか?」
俺の一言に、リカちゃんを除く4人の動きが止まった。
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