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ボスは誰か 2
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(おそ松サイド、トド松視点)
ボスの暗殺に成功したと、おそ松兄さんが言ったのは、丁度刃向かってきたみんなを片付けたころだった。
死体が転がる廊下はまさに地獄そのもので、吐き気すら覚える。でもそれを見ておそ松兄さんは、目を細めて短く笑った。
つくづくこの男は──と、肝を冷やした日から数週間。
あらかた死体の処理やら何やらが片付いた今日、おそ松兄さんはアリスが以前使っていた部屋に僕達を呼んだ。
しかし部屋には僕以外誰もいない。
とりあえず金と赤を貴重としたソファに腰掛けて2人が来るのを待つ。
──ドンッ!
誰が何かを叩くような音が響く。それも一度や二度でなく、不定期に間隔をあけて何度も。
「な……なに……」
しかもそれは段々間隔を短くして、そして回数が増えるごとにより強くなっているようだった。
怖い。こんな所にいつまでも一人でいられない。
僕は立ち上がって扉の方へかけた。そのとき、まるで見計らったかのように扉が開いた。
その奥から血だらけの──。
「ぎゃーーーーーっ!!」
「うるさいんだけど」
一松兄さんだった。
「……あ、あれ? 一松兄さん。何で血だらけなの?」
「裏にいたゴロツキに絡まれて、ちょっと」
せっかくのスーツを血まみれにした一松兄さんに気を取られていると、さっきの不可思議な音がいつの間にか止んでいる。
それを一松兄さんにも説明しようとした時、また扉が開いた。
前よりもシルバー類を身につけたおそ松兄さんがへらへらと、遅くなってごめんね、と笑っている。
「さ、始めますか」
おそ松兄さんは部屋に入るなり、戸棚からワインを取り出し、僕らに注ぎながら話を続ける。
「まずはボス暗殺お疲れさま。これはそのお祝いね」
「ありがと」
注がれたワインを一口飲みながらおそ松兄さんのグラスを見ると、僕らより少し多めに注がれていた。
「そんでさ、ボスが不在っていうのはダメじゃん? だからさぁ、ちゃっちゃと決めちゃわない?」
楽しそうに目配せするおそ松兄さんは、天井高くに手を挙げた。
「やっぱり長男のおれがボスでしょ!」
まあ、そんなことだろうと思ったけど。おそ松兄さんが暗殺計画を持ち出したとき、あるいはそれ以前に生まれたときから、おそ松兄さんがボスになることは決まっていたような気がする。
それでもおそ松兄さんは僕らにも一応聞いた。
「僕は、めんどくさいからいいや」
「に……荷が重い」
「でしょー! だ、か、ら、お兄ちゃんがボスやってやるよぉ」
ね、ね?と何度も確認するおそ松兄さんは、無邪気な子供の笑顔をしていた。
僕も一松兄さんもハイハイと受け流して、そのまま部屋を後にする。
部屋を出る時、またあのドンという音がしたけど、もう怖くて振り返らなかった。
きっとおそ松兄さんは何か隠していることがある。そしてそれに触れちゃいけない。
僕の中で何かが危険信号を発していた。
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