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翌日。
昨晩届いた学生会からのメールの内容など頭から吹き飛ばし、午前中の講義に集中することにした。
今朝になり、寝て冴えた頭で考えた結論は「学生会室には行かない」だった。
そして、4年間の幕開けともいえる講義の初回もしっかり出席する。
っていうか、
1回生なので、取得科目は多い。自分の必須科目と選択科目を合わせると、1週間のうち月曜~金曜までは基本的に朝から夕方まで講義が詰まる状態だった。
そして、現在は必須科目の一つ、『心理学概論』を受けている最中だ。
担当は上野教授。穏やかな顔付きの男性教授で、間延びするような話し方をする。だが、講義内容はわかりやすい。
といっても、初回なので大学前期における講義の全体の流れの説明などだが。
「この『心理学概論』ではぁ~、心理学とはなにかぁ~とか、どんな実験が過去にされたのかぁ~、とか、心理学について浅く広く全般にわたって講義していきますぅ~~」
のんびりな口調とは裏腹に、教授はテキパキとパソコンを操作してスライドに画面を映し出す。
「テストについてはぁ~夏休み前にまとめてやるテストとぉ~、間にちょくちょく小分けにするテスト入れるから油断しないよにしてくださいねぇ~」
ちゃんと講義受けてれば絶対大丈夫な内容のテストだからねぇ~、とのたまう教授の言葉をしっかり聞き取り、この講義はちゃんと聴こう、と決意を新たにする。
「ちゃんと聴いとかないといけないのか・・・俺講義って眠くなりそうだからヤバイかも・・・」
横から聞こえる声はスルーする。
「きれいにノートとる自信ないしなー・・・一夜漬けでどうにかなるもんかな?」
こちらのスルーもなんのその、相変わらず少し小さめの声で話しかけてくるのは、遠山だ。
実はこの科目、先述の通り必須科目のため、心理学部は全員参加なのだ。つまり、同じ心理学科の遠山も必然的に出席であることは明白だった。
だが、そもそも一度きりの出会いで、なおかつ学部生全体が多いこの科目ではまず会わないと思ったのに、向こうに見つかってしまったのだった。
昨日はどうも、なんて言って。
(寮では会わなかったのに、なんで講義室前で鉢合わせしてしまうんだオレ・・・!!)
「なぁ、宮野君、俺の話聴いてる?」
「・・・・聞こえてる」
このまま無視し続けるのもさすがに良くないと思い、返事をする。講義中なのでかなりの小声だが。
「よかった。このまま無視され続けたらさすがにヘコむところだった。」
ひそかに笑いながら放った遠山の言葉に、思わず「ごめん・・・」と告げた。
そんなふうに考えてるとは思わなかった。
「謝らなくていいよ。っていうか、宮野君意外と優しいんだね。」
「や、やさしい・・・・?」
聴き返すと、遠山は「うん」と頷き、そのまま講義内容をしっかり聴こうと集中する姿勢になった。
そんな彼に、どこが優しいのか聴くことができずに、とりあえずは自分も講義に集中することにした。
(県外のこの大学を選んだ理由をもしこの先遠山に言ったとして、それでもこいつはオレのことを優しいと言うのだろうか?)
そんなくだらない考えが一瞬脳裏を奔った。
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