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王宮 2 (シローside)
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汽車を降りる前に整えたはずの髪は、先ほどマントを被ったせいで軽く乱れ、持ち前の艶っぽさに拍車をかけている。
すれ違い様に睨まれた輩が、軒並み頬を染めて伏し目がちになる様は、壮観だった。
「……ほら、はぐれるぞ」
ルイに肩を抱かれ、慌てて後を追う。
「それにしても、おまえの主、あれは普通じゃないな」
同感だと、うなずいた。
「老若男女を問わず、皆あの人に夢中だ」
出入り禁止の身で何を、と貶めているようで、その実かまって欲しいのが見え見えだ。
今さらながらに、とんでもない相手と恋に落ちたものだと、震えた。
と、一人の紳士が主の前に進み出た。
「懐かしい顔だ」
「コッチとしちゃ、見たくもねェ面だがなァ」
紳士が主のマントの中に手を入れ、引き締まった腰を撫でるのが見えた瞬間、嫉妬が荒れ狂い、思わず駆け出そうとして、ルイに腕をつかまれた。
「あれはまずい。……クラウ公爵だ」
「……っ」
クラウ公爵といえば、現国王の叔父に当たる宮廷の実力者である。
「久しいな。相変わらず滴り落ちるような色香だ。とうだ、今宵も……」
「一度抱かせてやったくれェで、調子に乗ンな。つーか、今そっちは間に合ってンだよ。他当たれ、な?」
抱かせてやった……?
衝撃に、グラリと視界が揺らいだ。
次いで、猛烈な嫉妬がこみ上げた。
「困ったことがあったら、いつでも頼ってこい。その身体と引き換えになら、何でも聞いてやるぞ」
大人の余裕を見せて、あっさりと引いたクラウ公爵が去って行く。
「まったく、おまえの節操のなさには呆れるな」
リンがため息をついた。
「……ンだよ、テメェだって人のこた言えねェだろーが。社交界のご婦人方と、さんざん浮名を流したくせによ」
「おい、人を巻き込むな」
リンがルイの目を気にしながら、主を睨んだ。
「あなたの過去の悪行など、百も承知です」
ルイが冷たい目で切り捨てた。
「とにかく、見せ物になるのはごめんです。先を急ぎますよ」
道々、リンがルイの機嫌を取るのを見るともなしに眺めながら、機械的に足を進めはしたが、頭の中では先ほど耳にした内容が消化不良を起こし、グルグルとめぐるましく回っていた。
「……おい」
「……っ」
腕をつかまれ、つい過剰反応してしまう。
深々とため息をつかれ、チッと舌打ちした主に、廊下の隅にある小部屋に連れ込まれた。
月明かりだけが差し込む部屋の中、主は窓際にもたれかかると、ゆっくり喉元をくつろげた。
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