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仲間 1 (リューside)
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深夜、シローが完全に意識を手放すのを待つのを待って、ベッドから身体を起こした。
念のため、しばらく気配をうかがっていたが、起きる様子は見られない。
ベッドにいる時間自体は長くても、実際はひどく短眠な自分に比べ、生身のシローにはやはりそれなりの睡眠時間が必要になる。
癒されながらもひどく張り詰めたシローとの生活の中、ホッと一息つける時間は貴重だ。
シローが屋敷に来て間もない頃。
真夜中の2時過ぎに窓を開け放った際、しばらくして扉がノックされたのには驚いた。
気配は完全に寝入っていたように思えたからだ。
慣れない土地の慣れないベッドで眠りが浅かったのかと、その後も幾度か試みてみたが、結果は同じで。
何もかもが主人を中心に成り立つ生活の中、寝つきと寝起きの良さは立派な才能であり、仕事の質を大きく左右する。
歴代の執事の中でも、この年若い執事の有能さは抜きん出ていると舌を巻いたものだ。
とはいえ己の一挙一動に全神経を注ぐ懸命な姿がかわいくもある反面、独りの時間を持てないのには閉口した。
ある晩、限界まで追い詰め、気絶させたシローに同じことを試みたところ、わずかに気配が揺らいだものの、再び深い眠りに落ちていった。
これはいい手だとばかり、以来3日に一度は身体に負担と知りながらも必要以上に追い詰め、意識を手放させるようになった。
もっとも乱れるシローの艶っぽさに、単に止まれなくなるのも事実なのだが。
そっとベットを抜け出し、表地裏地共に闇色のマントに身を包むと、シローには教えていない一階の書斎の隠し扉を動かし、地下へと続く通路へと抜け出した。
採掘場のように狭く簡素な通路をたどると、再び階段が現れた。
登り、扉を開くと、暗く狭い空間に出た。
普通の人間ならまったくの暗闇だろうが、夜目の効く身には、昼間と何ら変わらない。
むしろ太陽の光の方が遥かに毒なのだから、皮肉なものだ。
大木の中にできた空洞を通り抜けると、夜の森に出た。
閉塞された空間から抜け出すと、よけいに自然の空気の美味さを感じた。
深く吸い込み、解き放つ。
凍てつくような北風も、こうして大地を踏みしめていると心地よく感じられるのだから不思議なものだ。
周囲に人の気配がないことを確認すると、隠していた翼を解き放つ。
肩甲骨が盛り上がり、やがてマントの上部の隙間から、身を包むほどの艶やかな漆黒の翼が現れた。
2度3度と羽ばたかせ、問題のないことを確認すると、天に向かい飛び立った。
屋敷の屋根よりも遥かに高い位置にある常緑樹の上に足を乗せ、月明かりを浴びて目を閉じた。
太陽の光は毒だが、月明かりには不思議と深く癒された。
密やかで厳しいのにやさしい清廉な光に、心が洗われ満ち足りていく。
まるでシローのようだと、口元にかすかな笑みが浮かぶ。
見るからに光り輝く太陽ではなく、一見目立たないが、次第にその魅力にはまり、狂おしいほどに求め、底なしに堕ちていくかのような……。
いつの日かシローの奥深くに身を沈め、まだ誰も暴いたことのない場所までたどり着いてみたい。
月明かりの見せる幻に、らしくもなく酔っていた時だった。
不意に周囲の空気がおかしな具合にざわめいて、眉を寄せた。
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