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仲間 3 (リューside)
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「……くそっ」
幼い頃の刷り込みとは恐ろしいものだ。
どうしたって会えば嬉しいと感じてしまう。
己の呪われた身体を消し去りたいほどに厭うことはあっても、不思議とジンを恨んだことはない。
共に過ごした日々を振り返ってみれば、闇に沈めたくなる記憶も数えきれないほどあるはずなのに、結局ははち切れんばかりに胸踊る楽しい思い出に集約され、甘く満たされた懐かしさの中に溶けてしまう。
仮にもう一度同じ帰路に立たされたとしても、同じ道を選ぶだろうと言いきれてしまう自分に、呆れるやら悔しいやら。
戦い方もベッドでの手練手管も。
思えばすべてをこの男から教わった。
端から敵うはずのない相手だが、だからといってやられっ放しは性に合わない。
「どーせリンの阿呆から、くだらねェうわさ話でも吹き込まれて来たンだろーが」
先回って釘を刺せば、
「それだよ、それ! すっげぇかわいい子だって話じゃねーか! もう、いても立ってもいられなくて、飛んできちまったぜ」
文字通り空を駆けてきた男が、興奮混じりに身を寄せてきた。
「……近ェよ」
「んだよ、あんなトコもこんなトコも、味わい尽くした仲だろーが」
何なら久しぶりにヤるかと後頭部と背中に腕を回され、本気の拳を鳩尾に打ち込んだ。
「……ンの、腐れビッチが。マジ吐くからヤメろ!」
とっさに腹筋を締め、急所をかわしたジンが、笑いながら離れていく。
「で、どんな子だ?」
「……誰が教えるか」
「そ? なら正式な使者を立てて王宮に招待すっから、いーわ」
「……テメェ」
「ぶはっ、おまえのそーゆー顔、ガキの頃とかわんねーな!」
「いちいち保護者ぶってンじゃねェ……っ」
クソッ、と吐き捨て、奥歯を噛み締めつつ、コイツなら本気でやりかねないと、背中に冷たい汗が伝う。
どちらも嫌だが、シローを王宮などに連れて行った日には、どこぞの好色なジジイに目をつけられないとも限らない。
伯爵家の執事ともなれば、簡単に引き抜かれる心配はないだろうが、いらぬ嫉妬にかられたユージンがシローに危害を加えかねないことを思えば、何があっても絶対に阻止したかった。
「……どーする?」
「……チッ」
「……舌打ちしたって、事態は変わんねーぞ?」
ニヤニヤと見つめられ、ついにブチ切れてつかみかかると、褐色の滑らかな首筋に歯を立てていた。
ちぅ……と遠慮なく吸えば、
「……っ」
ジンが表情を歪めたが、やがて仕方ねぇなと嘆息し、労わるように後頭部に手の平を添えられた。
思う存分に吸い、長い牙を抜くと、唇の端からこぼれ落ちた青い血を舌で舐め取った。
「……はっ」
ジンが己を抱きしめて、喘ぐ。
闇の種族の交配は、容赦なく劣情に火をつける。
濡れてわずかに開かれた、紅い唇。
熱に浮かされたような瞳に、負けず劣らず獣の目をした己が映っていた。
吸い取った血が全身に行き渡り、熱を持ち、鼓動を刻む。
再び身体を寄せてきたジンを、今度はもう拒めなかった。
絡み合いながら落下し、夕刻の雨でしっとりと濡れた大地に組み敷いた。
「……早く…っ」
脚を絡め、腰をすりよせ、誘いかけてくる。
「がま…、できね……っ」
「……っ」
腰から下の布を剥ぎ取り、筋肉質だが長くしなやかな脚を抱え上げると、飢えたように舌を突き刺した。
「あ……っ」
溢れる唾液を送り込み、ヒダをあやし、解す。
同時に己の下肢をくつろげた。
人相手の時とは違い、指で慣らす必要はない。
もとより受け入れるように身体ができている。
艶めかしく収縮する蕾に、限界まで猛り張り詰めた己を押し当てた。
「はぁ……っ」
「く……っ」
眼裏が灼けるような快感に襲われ、二度三度と連続で放った。
「……っ、……早漏すぎだろ……」
「は……っ、テメェだって雌イキしただろーが」
「相性良過ぎんだから、しょーがねぇじゃん……」
全然足りないと言いたげに腰を揺らしてきながら、ジンが笑う。
快感に意識が朦朧とし、ジワジワと食い尽くされていく気分になる。
初めて注いだ相手が特別なのか、ジンの身体が魅惑的過ぎるのか。
呆れるほどに果て、溢れるほどに注いでも、 止まらない……止まれなかった。
夜明けの気配が漂い始め、ようやくつながりを解いた後も猛りが収まらず、互いに白濁まみれの身体をマントで隠しながら、屋敷へと戻った。
身体を拭った布を暖炉に焚べ、ベッドを振り返った時もまだ、シローは深い眠りに落ちたままだった。
幼い寝顔に、途方もなく激しい欲望を覚え、伸びかけた指先を固く握る。
いつしかシローもまた幼い日の自分のように恋い焦がれた相手と結ばれた果てに堕ち、そして心変わりする日が来るのだろうか。
その時、自分がジンのようにあっさりこの手を離せるとは、到底思えなかった。
強引に縫い止め、手放すくらいならいっそ幽閉し、抱き潰してしまう気がしてならない。
女々しい自分を嘲笑いながら、狂ったように自慰に耽り、ついには眠れないまま朝を迎えた。
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