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猛獣使い
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レンガ造りの建物が列を連ねる
冬の街は、寒さに身を寄せ合って歩く恋人達で溢れていた
広場に出ると、多くの人が集まって皆広場の中心を興味深そうに見ている
デューク「何かあるんでしょうか?」
ルディ「さぁ」
大道芸人が手品でも披露しているのだろう
俺はさほど興味もわかず、その場を通り過ぎようとした
その時
ルディ「!」
突然人々の頭上に飛び上がった大きなライオン
ライオンは空中に掲げられた輪を立髪の一本も触れることなくくぐり抜けた
観衆から拍手と歓声があがる
デューク「わあ…すごい、ライオンですよ!僕ちょっと見てきます!」
ルディ「あ、おい!」
興奮した様子で駆けて行くデューク
俺は嫌な予感がして、デュークを引き留めようとしたが遅かった
ルディ「デューク!」
若干声を荒らげてデュークを呼ぶ
が、デュークは既に人混みに紛れてしまっていた
ルディ「…チッ」
大衆の中へ歩み入るのは気が進まないが
不安感に煽られグイッと一歩を踏み出す
人を掻き分け進んでいくと、人々の隙間から先程のライオンが見えた
ライオンの歩み寄る先には、仮面をつけた男
目が合った、気がした
「...おやおや」
男がライオンに何かを囁く
するとライオンはくるりとこちらに向きを変え、静かに歩き出した
驚いて後ずさるように道を開けた人々の中を堂々と進む
ライオンは、俺の目の前でピタリと歩みを止めた
そのオレンジ色の鋭い目はしっかりと俺を捉えていた
「エドガーはそちらのお客さんが気に入ったみたいだね」
仮面の男が芝居臭い喋り方で言うと、観衆の視線が瞬く間に俺に集中する
「エドガー」
ライオンの名前だろうか
仮面の男の言葉に反応したライオンは俺の後ろへ回り込みじりじりと俺を追い詰めるように観衆の輪の中へ誘導した
ここでこの場を離れたら
ライオンに怯えて逃げたと、見ている奴らに馬鹿にされそうで
ゆっくりと足を進める
仮面の男は目前まで迫っていた
俺はあくまで平常心を保ち、小さく息をはいて
観衆の中心
仮面の男と対面した
「...久しぶり、ルディ」
耳元に顔を寄せて囁いた男はアーロンだった
嫌な予感は的中した
アーロン「はいはい!ではこれからこの黒髪ちゃんの上をライオンが飛び越えるよー!」
ルディ「は?」
アーロン「ほら、ここに立って」
アーロンは俺の腕を強引に引き、ライオンに杖で指示を出した
アーロンが素早く杖を振ると、ライオンが勢いよく地面を蹴って飛び上がる
ルディ「...っ」
一瞬の出来事に頭が追いつかないないまま大きな拍手に包まれた
アーロン「はーい!今日はこれでお終い!ご観覧どうもありがとう」
アーロンが腹に手を添えて姿勢よくお辞儀をすると、人々は残念そうに散らばっていった
早く、早くアーロンから離れよう
そして早くデュークを見つけよう
俺が足早にその場を離れようとした、その時だった
ルディ「!!」
腕を強く引かれて後ろへ傾くと、アーロンがいた
スローモーションみたいに
風景が止まって見えた
仮面の下で不気味に微笑む口元が見える
視界の端に白いハンカチ
ふわりと甘い香りがしたと思うと
もう遅かった
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