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猛獣使い 17
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懐かしい感じがする
サラサラとしたシーツの肌触り
柔軟剤の優しい香り
心地いい
ルディ「...」
目を覚ますと、霞んだ視界に見慣れた天井が映る
やわらかい光
視界の隅にあるのは点滴だろうか
管が俺の方に向かって伸びている
右手に触れるやわらかい感触は何だ?
ルディ「うおっ」
自分の右手の方へ視線をやって、目に飛び込んだ大きな毛玉に驚き思わず声が漏れた
俺の声に反応した毛玉がゆっくり動き、大きな頭が持ち上がる
狼だった
ガンガンと痛む頭を押さえて上半身を起こす
どうして狼がいるのか、どうして俺は点滴に繋がれているのか
状況を理解しようと考えを巡らせた
突然、カランと何かが落ちる音
デューク「ルディさん...!?」
ルディ「っと」
振り返る間もなく腕の中閉じ込められた
部屋に入ってきたデュークが、持っていた洗面器とタオルを放り投げて俺に飛びついてきたのだ
デューク「ルディさん...良かった...っ」
ルディ「...苦しい」
加減というものを忘れたのか、デュークは力任せに腕を締め付ける
何とか首を捻ってデュークの顔を見ると、目の下は腫れ、酷い顔になっていた
寝てないのか?
デュークは締め付けていた腕を解くとそのままの勢いで俺の肩を強く掴んだ
デューク「痛いとこないですかっ大丈夫ですかっ?」
ルディ「お前が掴んでる肩が痛てえよ」
デュークは泣きながら笑って、すみませんと言った
...泣くなよ
デューク「その狼が、ルディさんを連れてきたんですよ」
右手に触れる柔らかい毛
そうだ
この狼がアーロンの元から俺を連れ出してくれたのだ
だが俺は途中で意識を失ったらしい、どのようにして家までたどり着いたのか、何も覚えていない
デューク「その狼は一体何なんですか?」
ルディ「ああ...」
こいつは
ルディ「アーロンの狼」
名前は確か
ルディ「カイザー」
狼が顔を上げて俺を見る
そのやわらかい毛に、手のひらでそっと触れた
ルディ「...ありがとな」
カイザーは目を細めて俺の手に頬ずりした
どうして俺を助けたのかは分からない
ここまで連れてこられたのは、きっと野性的な何かがあるのだろう
俺一人では、到底帰ることはできなかった
懐っこく見えるその狼を不思議そうな顔で見ていたデュークが、ふと口を開く
デューク「アーロンって?」
ルディ「猛獣使い」
途端にデュークの顔が曇る
今までに見たことがない顔だ
普段は虫も殺せないような優男でも、こんな風に怒りに満ちた顔をするのか
デューク「...で、どうするんですか?えぇと...カイザー?」
どうする、って
相変わらず俺の隣で寝ているカイザーを見る
こいつは狼だが、俺を救ってくれた
こいつが自らアーロンの元に戻らないのなら
追い出す理由はない
目を閉じるカイザーの頭を撫でた
すると何故かデュークが頬を膨らませてムッとした顔をする
デューク「…僕ルディさんに撫でてもらった事ないです…」
アホか
こいつは狼に嫉妬してるのか?
デュークは自分でも馬鹿らしいと思ったのか少し恥ずかしそうに目を逸らすと、床に放り出された洗面器やタオルを拾い始める
その背中を見ているとキュッと胸が締め付けられた
何だ、この気持ちは
ルディ「.........これはお前がやったのか?」
俺の腕に繋がれた点滴を目で指して問う
デューク「はい、ビタミン剤とブドウ糖...」
ルディ「すごいじゃねえか」
デュークも辛かったろうか
少し俺が居ないだけでこんなにも目を腫らして
俺の事を待っていてくれたんだろうか
目を覚ましてデュークを見た時
俺は心底安心していた
やっと会えた
ずっと、この腕の中が恋しかった
わしゃわしゃとデュークの髪の毛を掻き乱すように撫でる
デュークは少し固まったあと、じわじわと顔を赤くした
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