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冬の夜 4
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夏は野宿でもいいんだけどさ、冬は泊めてくれるとこ無いと大変で。
いつだったか雪の降りそうな日に、夜になっても見つけらんなくて、やばいなって時があったんだ。
ほんと、寒い日でさ、日も暮れて人通りも少なくなってきて。
そしたら、背の低いおばあさんが声かけてくれたんだよ。
俺ね、思うんだ。貧しい人の方が親切なこと多いって。
で、そのおばあさんちに泊めてもらうことになったんだけど、小さなアパルトマンに独り暮らしで、すごく質素な部屋で、普通にセントラルヒーティングはあるんだけど窓やドアの立て付けが悪くて、寒い部屋だった。
おばあさんがホットミルク作ってくれて、蜂蜜入れて、寒いでしょ?って…。
なんか事情があって孫には会えないんだって言ってた。
何人の孫がいるのか知らないけど、一番小さい孫が俺くらいの年だって言ってた。
ベッドは当然ひとつしかないから一緒に寝たんだけど、孫といるみたいだって笑ってた。
笑ってたけど…寂しそうだったよ。
朝になると雪が積もっててさ、おばあさんが、もう少し泊まっていけば?って言ってくれたんだけど、俺はそこを出ちゃった。
色んな人から、うちの子になる?って言ってもらったけど、あのおばあさんの申し出を断るのは、いつもより気が引けた。
雪の日って、なんか、彼女を思い出す。
助けてくれた人はたくさんいて、ほとんどは顔も覚えてなくて、でも何人かは印象的で、彼女はその内の1人。
たくさんの人の有り難い申し出も、あんな寂しそうな人の厚意も、全部断ったのに、ミカにだけはOuiって返事した。
彼等には申し訳ない気持ちも実は少しだけあって、でも、もう会えないから、だからね、自分勝手な言い訳なんだけど、彼等にはありがとうって言う代わりに、ごめんねの代わりに、ミカとちゃんと…幸せになるからね…って…。
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