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アルは秘書1年生 2
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「ええと、じゃぁ、僕は助手席のほうがいいのかな?」
くすくすと笑いながらミカはアルにキィを渡すと、いつもとは反対側へ回った。
「そうですね。一応、体調不良ということになってますから」
アルは困ったように笑顔を作るとドアを開け、運転席に腰を下ろした。
アルは大学に通っている間に自動車免許を取った。
卒業後、ミカは社長なのだからと運転主役を申し出たが、あっさり却下された。
理由はミカが運転を好きだから。
気分転換になるらしい。
それでも疲れている時や、アルコールが入っている時はにはアルに代わってもらう。
「でも、体調不良で運転してもらうなんて多分、初めてだよね」
いたずらっぽく笑うミカにアルは曖昧にしか返事できない。
運転に不慣れで緊張しているというのではなく、実際には体調の悪くないミカを仕事があるにもかかわらず早退させてしまい、なおかつ自分まで半日で帰らされていることが情けないという思いからだった。
「アル、運転に集中して。事故は起こして欲しくない」
ミカはアルが自らを責める気持ちをシャットアウトさせた。
会社から車で20分少々の丘の中腹に2人のアパルトマンはある。
会社同様、ミカの亡くなった父の残してくれたものだ。
最上階にミカとアルは住んでいて、下の階は賃貸に出している。
1階が駐車場だが傾斜地に建っているためエントランスは2階にある。
だから駐車場は一見地下だ。
その薄暗い人気のない空間に車を停め、アルはエンジンを切った。
ミカが降りても車から出てくる気配のないアル。
ミカは運転席側の窓を指で叩くと、「アル?」と覗き込んだ。
アルはハンドルの上に顔を伏せていたが、窓を下ろすと
「やっぱり戻ります。ジルに悪いし」
と告げた。
再びキィを差し込もうとする彼を、ミカが窓から腕を差し入れて止めた。
「社長?」
ぐいっと窓側へ引っ張り上げられ、何が起きたのかもわからないままキスをされる。
ミカの唇は一旦離れるとすぐ戻ってきて、今度は深いキスをした。
「何を…!」
慌てるアルに構わず、ミカは「降りて」とドアを開けた。
促されてアルはシートベルトを外すと、ふと視界に入ったミカの顔に浮かぶ表情に動揺した。
不機嫌な顔してる。
原因が分からず困惑するアルの手を取ると、ミカは半ば強引にエレベーターへと歩き出した。
「ちょっ、そんな早く歩いたら転び、わ!」
ドアが開いたとたんエレベーターに投げ込まれ奥に追いやられたアルは、まだ不機嫌な顔のミカに再びキスをされた。
先程よりもさらに激しい口付け。
狭い空間に水音がこだまする。
2人とも呼吸が荒くなったところで、ようやくミカはアルを解放した。
「しゃ、…社長?」
なんで不機嫌なんだと疑問を頭に浮かべてから、しかし、すぐにアルは当然だなと納得した。
自分はミスをした。
会社では社長という立場上、そしてジルの手前、厳しく叱責することができなかったのだろう。
だが今は2人きりだ。
感情を前面に出して詰りたい気分になったのだろう。
ならば、それは自分の落ち度なのだから甘んじて受けよう。
アルは覚悟を決めた。
しかし、彼は気付いていなかった。
ならば、なぜミカはキスなんてしたのか、その理由を。
普通、これから詰ろうとする相手にキスなどしないだろう。
アルはそこを見落としていた。
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