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アルは秘書1年生 3
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帰宅するなりミカはソファに身を投げ、後ろからおずおずと着いてきたアルに「おいで」と声をかけた。
所在無げにしていたアルはミカの正面に立つと目も合わせられず項垂れた。
「社長、申し訳ありませんでした。代役の方にまでご迷惑―、うわっ」
ミカがぐいっと両手を引っ張ったので、アルはそのまま前にいるミカの膝の上に乗り上げてしまった。
「あ、すみません!」
慌てて立ち上がろうとするアルを抑えて、ミカは相変わらず不機嫌な顔のままアルの名を呼んだ。
「ここは家。会社じゃない」
家では名前で呼ぶこと。
上下関係ではなく対等の関係でいること。
だから、敬語は無し。
以前、プライベートと仕事を分けるようにとルールを決めた。
ミカはそれを持ち出してきたのだ。
しかし、アルとしては、それは分かっていても、そうできる気分ではない。
「アル」
「はい」
「僕の名前を呼んで」
しばし躊躇ったあと、アルはおずおずと口を開いて小さく彼の名を呼んだ。
「もう1回」
「…ミカ…」
少しだけミカの不機嫌は治っているようだが、それでもアルの肩には、まだ力が入っている。
「アル、キスして」
自宅のソファの上とはいえ、まだ2人ともスーツだ。
会社モードから完全に抜けきれない状態でキスをしろと言われても、アルは躊躇うばかり。
断りたいが断れば、また機嫌は悪くなるだろう。
思わず社長と呼びそうになるのをこらえて、アルが理由を聞こうとした矢先にミカは再び
「キス」
と、俯くアルの目を覗き込んだ。
アルはぎこちなくミカの唇に自分の唇を寄せた。
それはキスというより、ただの物理的接触。
温かみも何もないものだった。
「アル」
「はい」
再び俯いてしまったアルが小さく答える。
「それはキスじゃない。キスとは呼べない」
「…」
今だにミカに跨ったままだというのに、アルは叱られている子供のようにガチガチだ。
ミカはソファの背もたれに体重を預け、天井に顔を向けた。
「アルがキスしてくれな~い」
わざとらしく拗ねたようにセリフを吐くミカ。
「アルのキスが欲しいぃぃぃ」
子供のように駄々をこねて見せるミカに、アルは目が点になってしまう。
「アル~、キスっていうのはねぇ、こういうのを言うんだよ?」
言うが早いかミカはアルの唇を塞ぎ、情熱的なキスを送った。
「な…に、考えて…」
相変わらず上手なキスに翻弄されて呼吸が乱される。
肩で息をしながら、アルは訳がわからないと混乱する頭でそう聞いた。
「アル」
「はい」
「だから、アル」
「はい?」
「何考えてるのかって聞くから。答えはアルだよ。アルのこと考えてる」
「?」
ミカはアルを優しく抱きしめた。
「アルは考えすぎ。そんなに深刻に考えなくていいよ。真面目なのは良いことだけどさ」
ミカがアルの髪を撫でる。
「ジルがうまいことやってくれるから大丈夫だよ。それにダブルブッキングは初めてじゃない。まぁ、しょっちゅうではないけど」
それから、アルの背中を宥めるようにタップする。
「…ごめんなさい」
「いいよ、謝らなくて。これもひとつの経験さ。ね?」
「でも」
「ア~ル、いつまでも引きずらない」
ようやく力の抜けたアルはミカの首に腕を回し、肩口に顔をうずめた。
「…うん」
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