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18歳以上ですか?
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指輪の無いプロポーズ 7
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「乾杯」
「乾杯」
夕食には少々早い時間で、まだ日も高いが、ささやかながらもパーティーだからと、ミカのグラスにはシャンパンが入っていた。
残念ながらアルのグラスはソフトドリンクだが、それも2年後の誕生日前日までだ。
18歳になれば一緒にシャンパンを開けられる。
そう、アルは16歳ということになった。
今日はその誕生祝いだ。
正規の身分証明書が取れたお祝いでもある。
アルは身分証明書が届いた日、ミカにそれを手渡され、震える手で受け取った。
誕生日はアルとミカが出会った日にした。
学業のことも考えて16歳にした。
身分証明書にはアルの姓が書かれていた。
ミカと同じWilliamsと。
「お誕生日おめでとう、アル・ウィリアムズ」
「ちょっ…! なんかそれ照れる!」
「どう? 僕の息子になった気分は」
「それ、こないだも聞かれたぁ。なんか慣れないし、不思議な気分だよ」
「もう1週間近く経つのに?」
「いや、まだ1週間でしょ」
「慣れてくれ、息子よ」
大袈裟な芝居がかった仕草でミカが嘆きを表す。
「無理! ってか、息子じゃないから!」
「え~、市民籍には僕の子供って書いてあるよ~」
「そ、そうだけど、なんか違和感…ていうか、やだ」
「やだ?」
「うん…」
アルは目をそらすとフォークをいじりながら続けた。
「息子ってことにしたけど、…恋人だから」
ぷっとミカが噴き出す。
「笑うな」
「ごめん。でも、拗ねたアルも可愛くて」
そう、どの方法をとるか2人で話し合った結果、アルはミカの養子になることに決めた。
アルだけで市民籍と身分証明書を作る方法も、養子にするのと同じくらい現実的な方法だった。
アルはミカに迷惑かけたくないと、その方法をとるつもりでいた。
しかしミカは、自分に万が一のことがあった時のことを考えて養子にしたいと願った。
何度も何度も話し合い、そして、ようやくアルも納得して養子になったわけだが、ミカと同じ姓というのがどうにもくすぐったい。
親子になったというよりも結婚したかのようで、胸が苦しくなったり、頭がふわふわしたり、頬が熱くなったり、とにかく落ち着かない。
「アル、ニヤけてる」
笑いながら指摘されて慌てるアル。
「だ、だって、う…嬉しい、から」
照れながら、でも、そうやって思いを伝えてくれる。
ミカは、それがまた嬉しかった。
「うん、僕も喜んでるよ。君が家族になってくれて感謝してる」
「いや、ありがとう言うのは俺の方だよ」
「ううん、僕もだよ。僕には家族がいなかったから、だから、家族を作れて嬉しい。僕の家族になってくれてありがとう、アル」
ミカの笑顔に胸が締め付けられて息ができない。
喜んでる顔の陰には涙があったのを知っているから。
嬉しいと笑うミカの目が、ちょっぴり悲しそうに見えたから。
それは今ではなく過去を思っての悲しみだとわかってる。
それでも切なくなるのに変わりはない。
「俺がミカを幸せにするから」
だから口を突いて出た言葉。
しかし、それは少し大胆で。
きょとんとしたミカがおかしそうに笑った。
「それ、プロポーズ?」
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