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監禁したい 2
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「アル、僕が心配してるのは分かってるよね?」
「うん」
海辺の街で再会した時、彼は病院のベッドの上だった。
だから夜に出歩くのなんて怖いだろうに、なぜか彼は気にしない。
怖くないのか、それとも、それを上回るほどに‘帰る場所’へ行きたい思いが強いのか…。
「アル、僕は君が大事。そして、とても大好き。君がいてくれるととても嬉しくて、いないととても寂しい」
「うん」
‘散歩’に行くなと言うのは簡単だ。
でも言ったところで、そして、仮に彼が行かないと約束したとしても、実際には無理だろう。
これ以上言えば責めてると彼は取るかもしれない。
そのつもりは無いから何も言わず、僕はもう一度彼の額にキスをして、
「帰るよ」
と、シートベルトを着けるよう促した。
静かな車内でアルが口を開いた。
「ミカ、いつも来てくれてありがとう」
「ん、いいよ」
「毎回ごめんね」
「で、今日は見つかったの?」
「ううん」
アルが悲しそうに首を横に振る。
「ミカもおかしいと思うかもしれないけど、時々、急に探しに行きたくなるんだ。ミカの家を帰る場所にするって決めたのに、変だよね…」
「仕方ないさ、アルは記憶を失ってるんだから。それでも行きたいと思うのなら、きっと余程のことがあるんでしょ」
アルは返事をしない。
多分、その‘余程のこと’が何なのか分からなくて困っているのだろう。
おぼろで断片的な記憶を手繰っているのかもしれない。
「ミカ」
「ん?」
「俺、ミカが大好き。すごく大好き。だから、ミカを俺の帰る場所にして、それを受け入れてくれて、嬉しくて、だから、満足なはずなんだ。なのに…なんでだろ。すごく、強く、惹かれるんだ。そこに誰が待ってるんだろ? 誰が俺を呼んでるんだろ…」
どう返事をすれば良いのだろう。
本音を言えば傷付ける。
だって僕は、そんなの思い出さなくていいなんて考えてるんだから。
‘帰る場所’に待ってるのが誰だろうとアルを渡さない。
アルがそちらを選ぶなら、いっそ閉じ込めておきたいとすら思う僕は、本当の意味でアルを幸せにはできないのだろう。
だから思い出さないでと願い、その分を埋め合わせて余りあるほど愛して、大切にして、幸せにしてあげると決めたんだ。
だからアルに本音を言うことはできない。
僕の弱さだから。
「焦らなくていいよ。お医者さんも言ってたでしょ? 焦ると余計に思い出せなくなるって」
「うん…」
「のんびり構えよう」
そう、のんびりでいい。ゆっくりでいい。
それまでの時間を僕と過ごしてほしい。
いっそ思い出すのは生涯を終える時でいい。
「帰ったら何食べたい? お腹空いたでしょ」
返事が無いので横を見るとアルは眠っていた。
こんな長距離を歩き続けていたのなら疲れもするだろう。
でも、事故に遭わなくて良かった。事件に巻き込まれなくて良かった。
結局僕はいつもこうやって安心してしまう。
自分でも驚くほどアルに嵌ってる。
まぁ、いいか。
僕は彼の寝息に胸が温まるのを感じた。
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