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監禁したい 4
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帰宅すると僕はアルをベッドに放り投げた。
「ごめん、ミカ。もう迷惑かけない。出てくよ。ほんとにゴメン。今までありが、うわっ」
「誰が出ていくって?」
アルを押し倒して馬乗りになる。
せっかく抑えた感情が前面に出る。
「そんなの許さないよ」
外したネクタイでアルの両手首を頭の上で縛り上げた。
「ミ…ミカ…?」
怯えてる。そんな顔見たいんじゃないのに。
でも自分を止められない。
荒っぽいキスをして服を剥ぎ取り、鎖骨に噛みつく。
「痛っ」
構わずアルのベルトに手をかけ、彼をシャツ一枚の姿にした。
強引にうつ伏せにさせ腰を引き上げ、温めもせずにローションをぶちまける。
ローションを自分にかけると、ろくに慣らしてもいない後孔に突き立てた。
「ぅあっ…!」
そのあと僕が果てるまでアルは一言も発さなかった。
僕は愛ではなく苛立ちをアルの中に放った。
僕ではだめなのか。
引き留めておくには不十分なのか。
僕では足らないのか。
アルには必要じゃないのか。
そんな悲しみと怒りを僕はアルの体内に叩きつけた。
僕の体温は上がってるのに胸が冷えてる。
鼓動も呼吸もこんなに早いのに体の内側が冷たい。
ずるりとアルの中から引き抜くと、アルがごろりと横向きに転がった。
アルは唇をかんで嗚咽を堪えながら泣いていた。
ああ、僕は自分でアルを手放してしまった。
欲しかったのに、自分で関係を壊してしまった。
本当に僕は愚かだ。
こんなことしたかったんじゃないのに…。
「…ごめん…アル…」
ネクタイを解こうとすると彼はびくっと体を震わせた。
「解くだけだから」
両手が自由になるとアルはごしごしと涙をふき、床に散乱した服を抱きしめるようにして寝室を出ていった。
ここを出ていくんだろう。
当たり前だ。こんなことされて留まるわけがない。
僕は引き止める気力も無く、ベッドに腰かけたまま頭を抱えた。
アルを失った。自分で失わせた。
呆れる。笑えるなんてもんじゃない。
馬鹿にもほどがあるだろう。本当に愚かだ。
一体どれくらいの時間、僕は己を罵っていただろう。
小さな物音がして、僕は顔を上げた。
…え…?
そこにはバスローブ姿のアルが立っていた。
「…アル…?」
ベッドランプしか点いてないから顔が良く見えない。
彼は一歩近付くと
「シャワー…借りてた」
と、何の感情も読み取れない報告をしてくれた。
「出て行ったのかと思―」
そこまで言って気付いた。
これから出ていくのか、朝になって明るくなったら出ていくつもりなのかもしれない。
いや、きっとそうだろう。
だからシャワーを浴びて支度したんだ。
アルはベッドの上に放ったままのネクタイを拾うと僕に差し出した。
「ミカがしたいのなら俺を縛って。ミカが安心するなら俺を鎖で繋いだっていいよ」
何を言ってるんだ?
アルの手元から顔へ目を移すと、彼は泣きそうに笑っていた。
「ミカ、ごめん。いつも迷惑かけて。いつも迎えに来てくれてありがとう。でも、ミカだって仕事で疲れてるよね? なのにこんな夜遅くまで俺を探してくれて…。ミカの負担になりたくない。でも俺、自分を止められない。だからミカ、俺を縛ってよ」
僕は恐る恐る彼の手を取った。
自分の手が細かく震えてるのが分かる。
彼の両手を、そっと握った。
「怖くないの…?」
「ミカが?」
「だって、アルに酷いことした」
「…罰だと思ったから」
僕は思わず彼を強く抱き寄せた。
「ごめん! ごめん、アル。そんなこと思わせてゴメン。違う。罰なんかじゃない。全部僕が悪いんだ。僕が弱いからあんなことした」
謝っても謝っても後悔の念は拭えない。
自分で自分を許せないのにアルは僕を安心させようとしてる。
どこまで僕は弱いんだろう。
「僕はアルが離れてくのが怖くて、ここにいて欲しくて、でも僕じゃ君を繋ぎ止めておくには力不足で、だから、僕は僕に腹が立って、なのに君に怒りをぶつけた。すまない」
「俺、怖かった」
「ごめん」
「痛かった」
「本当にごめん!」
「だけど辛かった」
「ごめん」
「違うんだ、ミカ。ミカの望みに応えられないのが辛かったんだ」
「望み?」
何のことだろうと、僕は体を少し離すとアルの顔をまじまじと見た。
「ミカはいつも迎えに来てくれる。そして、ほっとした顔して抱きしめてくれる。ほっとするってことは、俺を心配してくれてたわけでしょ? でも世の中、心配して楽しいって人いないと思うんだ。きっとミカだって、俺がどこ行っちゃったとか、どっかで車にひかれてないかとか、心配したくないと思うんだよね。それに、ほっとしてくれるってことは俺がいた方が安心するってことでしょ? だから、きっとミカはそれを望んでる。ハラハラするより安心する方を望んでる。誰だってそうだと思うから、だからミカもそうなんだと思った、…んだけど、違ってた?」
「違うわけないでしょ」
「良かった」
アルは微笑んで続けた。
「だから、ミカにはそうしてて欲しいし、その望みも叶えたいって思うのに、自分を止められなくて、ミカに負担かけてるのが辛かったんだ」
ふと真剣な眼差しになってアルは言った。
「キスしていい?」
僕がまっすぐ彼の目を見て小さく頷くと、アルはそっとキスして、肩に顎を乗せるようにして僕を抱きしめた。
「愛してる、ミカ」
「僕もだよ」
「大好きな人を悲しませたくない。だから力不足なんて言わないで。ミカが弱いんじゃない。繋ぎ止めてくれてるミカを振り切る俺がいけないんだ。だから、俺のせい。だから俺はミカになら何されても文句は言わないよ」
彼に回した腕に、ぎゅっと力を入れた。
「そんなこと言わないで、アル。罰じゃない。縛りつけておくなんてだめだ。僕が望むのは君の幸せなんだから」
「俺もミカの幸せが望み。なら、ミカに心配かけてる俺は、幸せにできてないから、だから」
僕は続きをキスで遮った。
「アル、子供の心配は親の特権だよ?」
「こんな時だけ親子? 都合いいなぁ」
アルが笑った。
「親子で恋人って背徳的?」
僕が茶化すとアルは「うっわぁ、そういう趣味?」と返してきた。
しばし笑い合った後、僕は改めて聞いた。
「怖かったよね?」
「…あ~…うん」
「ごめんね。痛くして」
「だから、もういいって。それよりさ」
アルはナイトテーブルから小さなチューブを取ると僕に渡した。
「これ、塗ってよ」
そのチューブは切傷用の軟膏だった。
アルが僕に背を向けると顔を赤くしてバスローブの裾をまくる。
照れてるアルが可愛くて僕はつい笑ってしまった。
「ミカのせいだからね!」
「そうだよね。ごめん」
僕はキャップを開けて指に軟膏を絞り出した。
「治るまで禁欲!」
「え~」
「どんだけ絶倫なの!?」
あー、可愛い。我慢できるかなぁ。
僕は反省しつつ、そんなことを思った。
そして、アルのお許しが出たら、次に抱く時は思いっきり甘やかそうと決めた。
本当はトラウマにならないか心配だけど、それは言わずに。
それから、いつかオモチャも試してみたいなぁ、なんて不謹慎なことを考えていたのはアルには内緒だ。
絶対に。
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