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Vierge 3
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土曜日だからなのか学食は空いていた。
大きな楕円形のテーブルに席を取り7人で食事を囲む。
「アルのお父さんにしてはお若いですね」
向かいの席からニノンが、失礼ですがと断った上で聞いてきた。
「そうですね。アルとは血は繋がってませんから」
「あ、そうなんですね」
それからもミカは何かと質問されている。
その後、リュカが笑いながらミカに言った。
「アルの恋人のことはご存じなんですか? 指輪の相手のこと、何にも教えてくれないんですよ」
ミカは俺を見て小さく笑うと彼に答えてくれた。
「ええ、良く知ってますよ」
「どんな人なんですか?」
「この大学にいます?」
皆がいっぺんに質問するもんだから、ミカは「人気者だね」と俺に笑った。
でも、俺としてはミカがどう答えるのか気が気じゃない。
「アルは答えてないのですか?」
頷く一同に、ミカは笑顔を崩さず口を開いた。
「では、僕から言うことはできません。アルが言いたくないこと、明かしたくないことは、僕から漏らすべきではないと考えますから」
いかにも残念といった顔の5人。
でも深追いはしてこない。
だから安心して彼らとは付き合えてる。
食事が終わると俺とミカは5人と別れて駐車場へ向かった。
「どこか寄りたいところある?」
「ん~、別に無いかな」
「じゃ、いつもの買い出ししたら帰ろうか? それとも天気いいから公園にでも行く?」
その時、メールが届いたことを知らせる音が鳴って、俺はケータイを開いた。
ニノンからだった。
ざっと読んでケータイをしまうと、俺は「帰る」と返事をした。
「返信しなくていいの? ―どしたの、急に不機嫌になって」
「なんでもない」
メールの内容はミカについての質問だった。
〈確かアルって父子家庭だったよね? でも、ミカさん、指輪してたよね? 今は奥さんいないってこと? それならフリーかな? すっごい気になるんだけど!〉云々…
なんかムカつく。ミカは俺のだ。
その指輪は俺とのペアリングなんだよ、ニノン!
お揃いだろ。見て気付かないのか。
いや気付かれちゃまずいんだけど。
あーもー、ミカ目的で俺に近付くとかまとわりつくとか、これからされるのかな?
どうやって躱せばいいんだよ!?
「アル?」
「?」
「着いたよ?」
はっ! いけね。
いつの間にか上の空で買い物を済ませてたらしい。
食料の入った袋を抱えて車を降り、エレベーターに乗って家に戻って、キッチンに行って食料しまって、その間ミカをずっと見つめていたらしい。
「アル、どうしたの?」
苦笑するミカに俺は答えられなくて口ごもる。
うまく言えなくてミカに抱き着いた。
「ミカは俺のだ」
「どうしたの、急に…」
ミカはぽんぽんて頭を撫でてくれる。
「誰にも渡さない」
「そうだね。僕はアルのもので、アルは僕のものだよ」
ミカの胸にくっつけた顔を上げてミカを見上げる俺の顔には、多分、不安でいっぱいと書いてあっただろう。
ミカは宥めるようにキスしてくれた。
「メール来た。ニノンから」
「うん」
「ミカに一目惚れしたっぽい」
「おやおや」
「ミカに会わせてって」
「それは困ったね」
「俺、やだ」
「ニノンて僕の向かいに座ってた女の子だよね?」
「うん」
「やけに絡んでくると思ったら、そういうことか」
「断るよ」
「そうしてくれると嬉しいな」
「でも、俺、上手な断り方知らない」
「おいで」
ミカは俺の手を繋いだままソファまで行って座ると、膝に跨れと手を引いた。
言われたとおりにするけど、…この体勢は恥ずかしい。
「アル、確かに親しい間柄で断るっていうのは、それが何であれ難しいものだよね。でも、それは訓練して身に付けるべきスキルだよ。将来、必ず必要になるし役に立つ。本を貸してあげるから読んでみて」
「ありがと」
ミカが優しいキスをくれる。
「アルのヤキモチも嬉しいよ」
「俺、ヤキモチなんか…」
「じゃ、嫉妬? 独占欲?」
「…どれでもいいけど…」
やっぱり恥ずかしくて、俺はミカの肩口におでこをくっつけてしまった。
「アルが、僕がニノンと会うのを嫌だって思ってくれて嬉しいよ。逆に、いいよなんて言われたらショックだよ」
小さく笑ってミカが髪にキスする。
「アル、うまく断れなくてもいい。でも、嫌なものは嫌と言うことは大事だよ。正直に言えばいい。もし、難しければ今回は、ミカが断ったって言えばいいよ。実際、僕も会う気は無いからね」
俺は本当に助けられて教えてもらってばかりだ。
在学中に吸収しなきゃならないことはたくさんある。
ミカのためにも、できるだけいっぱい吸収したい。
「ミカ、大好きだ」
俺はミカを抱きしめた。
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