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混交雑 3
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ロロは食物アレルギーは無いがトマトが嫌いだとジルは言っていた。
アルが夕食を作っている間、ミカはロロとなんとか仲良くなろうと努力していた。
「泣きはしないけど笑いもしないね。緊張してるの? ロロ。安心して、僕はジルの友達だから。ジルが具合悪いから、その間は僕の家に泊まってもらうんだよ」
「…」
「お腹空いた?」
「…」
「もしかして眠い?」
「…」
「しゃべりたくないの?」
「…」
真一文字に結ばれた唇は、結局言葉を発するために開かれることは無かった。
アルがダイニングテーブルに食事を並べると、ミカは椅子の上にクッションを重ね、その上に大きめのバスタオルを広げてからロロを座らせた。
ジルの話ではロロは食事中にフォークやスプーンを投げることがあるらしい。
それを止めるのが間に合わなかった時のためにバスタオルを敷いておくといいとアドバイスをもらっていた。
スプーンを持たせるとロロは握ったまま手を付けようとしない。
「トマトは入ってないよ」
しばらく様子を見ているとロロはスプーンをシチューに突っ込み、そして、それを投げた。
スプーンは宙を舞い、隣にいたミカの頭上へ。
それを見てアルが爆笑するとロロは突然笑い出し、きゃっきゃと騒ぎながらシチューの中に手を突っ込んだ。
ミカとアルが、あっと思った時には遅かった。
熱いシチューで右手をやけどしたロロは、わんわんと泣きながらべたべたの手を振り回した。
ミカがロロを抱き上げキッチンの水道で右手を冷やし始めたがロロは泣き止まない。
泣き止まないどころか、余計に暴れてあちこちに水が飛び散る。
そんなロロを押さえながらミカはアルにジルへ電話するように指示した。
両手が塞がっているのでアルがミカの耳にスマートフォンを当てる。
「ジル? 寝てるところをすまない。実はロロがやけどしてね。預かると言ってやけどさせるなんて本当に申し訳ない。それで今、水で冷やしてるんだけど病院に連れて行った方がいいかな?」
「写真送っていただけますか? 水泡とかできてます?」
「今のところは多分無いと思う」
アルは自分のスマートフォンでロロの右手を撮るとすぐに送信した。
「写真見ました。これくらいの赤味なら多分大丈夫です。ビニールかラップで手を包んで、その上から冷やしてください。濡れタオルの間に氷を挟んで手を包むんです」
「わかった。やってみる。ありがとう。また連絡するね」
「ええ、お願いします」
アルはジルの指示通りにロロの手を冷やした。
ミカの膝に抱かれ、暴れないようにがっちりホールドされてるロロは、まだぐずぐずと泣いている。
「ロロ、ごめんね。痛いよね」
少し静かになってきたところでアルは言った。
「ミカは食事しちゃって。ロロは俺が見ておくから。それとも先にシャワーがいい?」
頭とシャツはシチューでべたべたな上にびしょ濡れだ。
ロロの涙や鼻水もついている。
ミカはシャワーを選ぶとアルにロロを渡した。
アルはロロをバスタオルで包み、膝の上に乗せると説明した。
「ロロ、右手は冷やしておかないといけないから、じっとしててね。で、右手が使えないから俺が食べさせてあげる。OK?]
ロロは不思議そうに首を傾げるが暴れたりはしない。
アルは冷めたシチューをすくってロロの口元にスプーンを寄せた。
「熱くないよ。大丈夫」
パクっとロロはスプーンを咥えた。
「おいしい?」
小さくちぎったパンを口に入れてあげると、「よく噛んで」というアルに従ってもぐもぐと咀嚼する。
シャワーを浴びて戻ってきたミカが、その様子を見て「鳥のヒナみたいだ」と笑った。
ミカはシチューを温めなおす間に床やテーブルに飛び散ったシチューを拭いて、アルの「先に食べてて」という言葉に甘えて食事を再開した。
ロロはおとなしく食べさせてもらっている。
「アルは上手だね」
「ロロは協力的なんだよ。…もしかしたら俺、弟か妹がいたのかも…」
ちょっぴり悲しそうな顔をして、ロロの口にスプーンを運ぶアル。
遠くを見るような目はロロを通り越して記憶の彼方を探っているようだった。
「会いたいかい?」
「…会えるなら…。でも、どうなんだろう。会えたら、やっぱり嬉しいのかな? わかんないや」
ロロに笑いかけるアルが寂しそうで、ミカは自分まで切なくなるのを
「案外弟とかじゃなくて、アルの子供だったりして」
と揶揄うことでごまかした。
「え、子供!? いや、それは無いでしょっ!」
「わかんないよ~」
なおも揶揄うミカに
「ロロ見てて」
と押し付けて、アルは自分のシチューを温めなおした。
「俺が食べ終わったらロロとお風呂入ってくるから。風呂上りはミカに任せていい?」
「いいよ。ね? ロロ」
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