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アルは人気者 4
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翌日。
あの後バスルームで抱かれて、ベッドでもさんざん喘がされたアルは昼頃まで目を覚まさなかった。
ミカも二度寝しながら、休日の朝に恋人を抱きしめて微睡む幸せを噛み締めていた。
もぞもぞとアルが寝返りを打ち、ミカが「おはよう」とキスをする。
ワンテンポ遅れてアルが掠れた声で返事をした。
ブランチを食べ、洗濯や掃除をして、「お茶にする?」とミカが声をかけるとアルは手を洗ってキッチンへ来た。
「パッションブレンド飲んでみる?」
アーユルヴェーダを参考にしてブレンドしたハーブティーのシリーズは販売が開始されたばかりで、試作品は飲んだが完成品はまだ飲んだことがなかった。
「うん」
2人でソファに並んで座り、一口すする。
「ん~、飲みやすいけど、逆にこれ効くの?」
「クセがあったからそれを無くそうと思って色々ブレンドしたんだけど…。まぁ、まだパイロット版だし、下のアンテナショップに置いておく分くらいしか作ってないんだ。量産は未定だなぁ…」
お茶も半分くらいになる頃、ミカがふと思い出したように言った。
「ちょっと仕事の話してもいい? 休日だけど」
「うん。何?」
「実は来月いっぱいで退職する喫茶店のスタッフがいるんだ。あの店は元々、宣伝とアンテナショップの役割を目的に作られたから余り予算を割けない。2階の小売店と人を共通させて、何とかやりくりできるとは思うけど、ちょっと余裕なさすぎになるから、それを常態化させたくない。でも新しく雇うとしてもすぐには無理だし、人件費も正直、頭の痛いところなんだ」
話はどこは行くのだろうと、アルは何となく頷いた。
「で、アルに頼みがある。ジルと相談して不定期でいいから手伝いに行ってくれないかな?」
「え、俺が?」
「そ。全くの未経験じゃないでしょ?」
「まぁ、そうだけど…」
どうしたものかと言いよどむアルに、ミカはさらに続けた。
「それにね、実はアルって密かに人気なんだよ?」
「は?」
いたずらっぽく笑うミカに、意味不明だという顔で返すアル。
「お昼を取りに喫茶店に降りるでしょ? お問い合わせが多いんだよ。‘あのスーツでいつも来てる青年はどこのどなた?’ってね」
「え? えっ!? えーっ!?」
くすくすと笑っていたミカは、アルの予想以上の反応に気を良くして大きく笑った。
「アルはもてるね」
「え、いや、俺そんなの初耳」
「うん、初めて言ったもん。店長もね、ここの社長の秘書だよってくらいしか言ってないのに、わざわざアルを見に来る人もいるんだって」
面白そうに笑うミカにアルは口をポカーン。
「だからさ、アルが手伝いに行ってくれたら売り上げ伸びると思うんだよね」
「…それは…うん、喜ばしいことだね…うん」
アルはまだビックリしていて頭がついていかないようだ。
「それにね、将来のために今の内に経験しておくのもいいかなって思うんだ」
「将来?」
今度こそ訳が分からないという顔でアルは聞き返した。
「まだハッキリとはしてないんだけどね、いつか喫茶店をやりたいんだ。今の下のお店じゃなくて。年を取ってからの話だから何十年も先の話だけど。アルと2人でのんびりさ。どこか山奥でペンションでもいいよ?」
アルは先程とは全く違う意味で驚いていた。
毎日の仕事と、せいぜい数年程度の未来しか考えていないアルにとって、そんな先の話は丸っきり頭に無かった。
しかし、ミカはそこまで考えて今を決めてる。
そして、そんな未知数だらけの数十年後の人生にも自分を入れてくれている。
感動にも似た喜びでアルは絶句してしまった。
「アル? あれ? 嫌だった?」
年の離れたアルは自分とは違って残りの人生が長い。
そんな先まで縛られるのは予定外だったのかと、ミカの胸を不安がよぎった。
「ううん! 違う。嫌じゃない」
アルはミカに抱き着いた。
「嬉しい。ミカ、ありがとう」
幸せそうに笑うアルにミカはほっと胸を撫で下ろした。
そして、ミカもアルを抱き返して囁いた。
「一生離さないからね」
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