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愛してるって言いたかった。ハグしてキスをしたかった。 2
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「気をつけて。楽しんでおいで」
大きな荷物を手にするアルに、そう言ってキスするミカはまだ少し不安そうだ。
「行ってきます」
大学へアルが行き始めて最初の冬、友人からスキーに誘われたが結局断った。
記憶喪失のこと、‘散歩’のこと、スキーは未経験だったこと、まずは勉強に力を注ぎたいこと、色んな理由はあったが、何よりミカと休暇を過ごしたいと思ったからだ。
ミカもやはり心配していたし、アルには行って欲しくなかった。
しかし、もう大学生で、人間関係や良い意味で遊ぶことを覚えるために通学という方法を選んだのだから迷いもあった。
だからミカは自分の気持ちを話すだけで、あとはアルに任せた。
アルの決定に満足したミカは自分の独占欲に苦笑した。
翌冬も友人達からのスキーの誘いを断ったアルに、「じゃ、僕と2人で行く?」と聞いてみればアルは満面の笑みで頷いた。
そして、3年目の冬、最初の冬にあったような理由や心配は、あらかた払拭できていて、アルも行きたいと言ったのでミカは許可した。
若者らしく安上がりなバスツアーで、スキー場近くの宿と合わせたパック旅行。
この資金を稼ぐために、アルは夏休みにアルバイトをしていた。
何しろ生まれて初めてのアルバイトだから、心配症のミカは自分の会社の喫茶店で働かせた。
これが意外とうまくいき、アルは接客が上手だと店長も感心していた。
「いってらっしゃい」
意気揚々と出かけていくアルの後姿を見送って、ミカは寂しい気持ちになった。
子離れできてないな、と苦笑して、リビングに戻り、つけたままのテレビを見るともなしに眺める。
今年は雪が多いらしい。
アルは十分楽しめるだろう。
ミカは冷めた紅茶を一口飲んだ。
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