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愛してるって言いたかった。ハグしてキスをしたかった。 16
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ミカはサーバーから紙コップを取り出して紅茶を一口すすった。
安っぽい味にうんざりしたが、とにかく温かいものが欲しかったので我慢することにした。
きっとアルは今、冷たい雪の上だ。
こんな紅茶でもおいしいと感じるほど体は冷えているだろう。
温かいものをあげよう。
帰ってきたら温かく……そう、生きていたらの話だ。
生きてるかどうかも分からないのに…。
元の生活に戻るんじゃない。
もし、帰ってこなかったら以前の暮らしに戻るのではない。
アルという存在を失った人生を、その喪失感を抱えながら生きていくんだ。
…耐えられない。
失いたくない。生きていて欲しい。どんな姿でもいい、戻ってきてくれ。
アルを失うのが怖い。
他の何を手離してもいい。アルだけは失いたくない。
まだアルとしてないことがある。行きたいところ、見せたいものもある。教えたいことも。
そして一緒に見たい。2人でしかできない景色を見たい。
でも、もうそれもいい。そんなのできなくてもいい。
ただただ、アルが生きて帰ってきてくれさえすればいい。
知ってしまったら戻れない。アルのいない暮らしになんて戻れない。
無意味だ。そんなの、ただ息をしてるだけだ。
到底、人生とは呼べない。
僕の人生はアルと共にあるはずなのに、失ったら…失ったら…?
全てが崩れる。僕はただ死んでないだけの人間になる。
悲しい、寂しい、虚しい、辛い。そんなのじゃない。
アルのいない人生が――怖い。
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