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愛してるって言いたかった。ハグしてキスをしたかった。 23
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アルは長時間寒さにさらされ、空腹に耐えたせいか若者らしい食欲を見せた。
並んでキッチンに立つ幸せを改めて感じながら温かい食事を作り、2人で食べる。
自然と笑みがこぼれた。
「朝だけど寝ようか?」
2人とも昨夜は一睡もしていない。
それでも助かったという高揚感で眠くはなくて、しかし、体を休めようとミカが提案した。
「眠れなくても、横になるだけでもいいからさ」
「うん」
2人でベッドに潜り込むのは、ほんの1日ぶりなのに、なんだか久し振りのような気がする。
暖かいベッドで一緒に休めるのはいいもんだな、とアルは改めて感じた。
どちらからともなく抱き合うように体を向かい合わせる。
「ミカ」
「ん?」
アルがミカの胸に顔をうずめて幸せそうに笑った。
「愛してる」
「僕もだよ」
ミカは軽くキスをして、そう言った。
「へへ、やっと言えた」
「?」
「ミカに言いたかったんだ。もう一度、愛してるって。もう言えないかと思ってたから」
アルの言葉の意味を分かって、ミカは抱きしめる手に力を入れた。
「このまま助けは来ないんじゃないかって思った時、ミカに会いたくなった。ちょっとでいいから会って、ハグしてキスして、愛してるって言いたかった。それだけが心残りだなって思ったんだ…」
ミカは嬉しくて、そして、その時のアルの状況を思うと胸が痛くて、アルの髪を撫で、背を撫でた。
「僕も会いたかったよ。もう二度と会えないんじゃないかと思った時は怖かった」
「怖い?」
「そう、君を失うのがとてつもなく怖かった。アルがいない人生なんて絶対に嫌だった。だから」
ミカはそっとアルにキスをした。
「君をまた抱きしめられて嬉しい」
じゃれつくようにアルがミカに腕を回した。
「俺も」
アルが笑う。
「俺も嬉しい」
ミカが応えて笑う。
微笑んで、見つめ合って、猫のようにくっつき合って、戯れる2人の上に日差しは暖かく降り注いでいた。
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