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アルはネコ 1
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大学2年目も無事終わりそうな5月のある日、アルは友人達から気の早い誘いを受けた。
今年こそはスキーに行かないか?と、1年目の時から2シーズンも断っていたアルを、彼等はないがしろにしないで誘ってくれたのだ。
ミカに相談しなくてはならないが、アルは行きたいと答えた。
答えてから資金はどうしようと考えて、困った表情のアルに彼らはバイトすりゃいいじゃんとアドバイスした。
そろそろ夏休み。
しっかりバイトすればスキーに行くくらいは貯められる、彼らはそう請け合ってくれたがアルの心配はそこではなかった。
しかし、それは言わずにアルはアドバイスに礼を述べた。
「バイトしたい? どしたの、急に」
「やっぱ、…ダメ?」
夕食後、ソファで並んで寛いでいる時に、アルは夏休みのことをミカに相談した。
「欲しいものがあるなら言ってごらん。とんでもないものでない限り買ってあげるよ?」
「冬に友達とスキーに行きたいんだ。その資金を稼ぎたくて…」
「スキー行くの?」
どことなく険しい雰囲気になったような気がして、アルはおずおずと頷いた。
「ふ~ん」
「…なんか、怒ってる…?」
なんで? どこに怒るポイントあった? 俺何かした?
アルは頭の中が疑問でいっぱいのまま自分の言動を再生してみた。
「いいや、怒ってないよ」
いや、逆にそのスマイルが怖いんだけど!
アルはどこでミカの怒りスイッチを入れたか分からなくて、心の中でじたばたした。
「バイトについては前向きに考えておくよ」
「あ、ありがと」
恐る恐るアルが礼を述べると、ミカは本を閉じて鼻歌を歌いながらスマートフォンを手に取った。
翌週の金曜日、ミカはアルに紙袋を渡してこう言った。
「明日の朝になったらこの中の箱を開けて。バイトの件の返事は明後日するよ」
「今開けちゃダメなの?」
「うん、今はダメ。明日のブランチはアルにお願いするね」
やたらニコニコしているミカが不気味で、アルは受け取った紙袋をそっと覗き込んだ。
「あ、それ、ナイトテーブルに置いておいて。起きたらすぐに開けるんだよ?」
ミカは鼻歌を歌いながらキッチンに入っていった。
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