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緑茶の国で 3
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日本茶の飲み比べもなかなかに面白い体験だった。
同じ茶葉が発酵の程度により緑茶にも紅茶にもなると知識としては知っていた。
しかし、緑茶も熱処理を蒸すのか炒るのか、蒸すならその時間、茶葉の育て方、茶の木のどの部分を使うか、摘み取る時期、等によって様々な種類があることにミカもアルも驚いた。
さらには一度出来上がったものを炒って飲むお茶もあるという。
紅茶同様に産地での味の違いはあるし、もちろん品種の差もある。
加工過程がこれほど多彩とは、しかもこれほど味が違うとは、ミカは茶碗に注ぎ分けられた緑茶を前に感嘆のため息をついた。
「うちで扱っているのではないのですが、最近はこういうものもあります」
と言って出されたのはフレーバー緑茶。
日本人にとって緑茶とはプレインで飲むものという認識が強い。
紅茶のようにフレーバーをつけるという発想は最近のものらしい。
ましてやミルクを入れたり何かで割るというのは、あまり知られていない飲み方だそうだ。
「こちらがローズ、これはライム、マスカット、桜、夏ミカン、シャンパン」
「え、シャンパン!?」
「はい。飲んでみますか?」
「ぜひ!」
いれてもらったシャンパンフレーバーの緑茶を飲みながら他のものも紹介してもらう。
かりん、さくらんぼ、すもも、本当に色々ある。
「ミルク出し緑茶に合うのはこちらだそうです」
そう言って並べられた緑茶のパッケージをリシャールがひとつひとつ読んでくれた。
「バナナチョコ、マロン、チョコミント、モカ、キャラメル、カボチャ…。緑茶も様々ですね」
リシャールの言葉にミカもアルも頷いた。
「それから、これはかなり珍しい飲み方ですが」
テーブルに置かれたのはフルートグラス。
黄色味を帯びた透明な液体の底には赤や青紫の粒が沈んでいて、小さな気泡が上がっている。
「これは何ですか?」
「飲んでみてください」
にっこり笑う上羽社長に促されて3人はグラスを手に取った。
ここで出されるから緑茶なのだろうけれど…。
3人は香りを確かめてから恐る恐る口をつけた。
「ん?」
「甘い…?」
「フルーツの香りと微かな渋味…。え、なんだろ、これ」
上羽社長は笑って答をくれた。
「柚子フレーバーの緑茶を濃いめに煮出して炭酸で割ったものです。氷の代わりにフローズンラズベリーとブルーベリーを入れたので目でも楽しめる。ちょっとおしゃれなノンアルコールカクテルみたいでしょう?」
リシャールが柚子というものについて補足説明してくれて、ミカとアルは感嘆の連続だった。
他にも緑茶で作ったアールグレイ、日本産の紅茶、日本らしいフレーバー紅茶を紹介された。
「フランス人はフレーバーティー好きだから、普通の緑茶と併せてフレーバー緑茶を出すのもいいかな。桜紅茶も和菓子と一緒に輸入できたらいいけど、和菓子は繊細だから難しそうだね」
とミカが言えば
「うんちく好きなフランス人にはむしろ緑茶を多種並べて違いを講釈するのも面白いかもしれませんよ」
とリシャールが言い
「まずはヴォトルキュイジンヌの喫茶店で出してみて、反応を見て…。あ、茶器もこだわってみますか?」
とアルが言う。
この先の戦略は考えるだけで面白そうだ。
最後に上羽社長は花粉症に効く緑茶というものを出してくれて、その日はお開きになった。
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