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Je marche la vie avec vous. 4
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「明日のチェックアウトまでには出来上がるって」
ミカに手を引かれて部屋に戻ってきたが、アルはまだ緊張やら高揚感やらで落ち着かない。
「早く見たいね」
ソファに座ったミカが、まだ呆然としているアルの手をくいっと引いて隣に座らせた。
「どうしたの」
くすくすと笑いながらアルの顔を覗き込むミカは、サプライズが成功してよほど嬉しかったらしい。
「ミカ」
「ん?」
「俺まだ頭ふわふわしてる。まだドキドキしてる。夢なのこれ? 俺、夢の中にいるの?」
「夢じゃないよ」
ふわりと抱き寄せて、ミカは髪にキスをした。
「現実。本当。ちゃんと実際に起きてることだよ、アル」
ミカはアルの髪を指で梳き、ゆっくりとそれを繰り返した。
「アルが16歳の誕生日の時に互いにプロポーズしたよね」
「うん」
「その時は指輪は無かったけど、大学に入る少し前、指輪を互いの指に着けて改めてプロポーズし合ったよね」
「うん」
「アルは結婚式みたいって言って、僕が立派に指輪の交換だよって言ったの、覚えてる?」
「うん、覚えてる」
「あれで僕は満足したし、アルも十分だと思ってくれたよね」
「うん」
「だから特にそれ以上のことをするつもりは無かったんだ。だけど、アルは卒業して入社を控えて、僕は指輪を社内では外しててってお願いして、僕が何年もそうしてきたことは隠してて、それをアルに言った。アルは嬉しくなかったよね」
「…うん」
「きっと不満だと思う」
「それは…!」
慌てて否定しようとするアルの額にキスをして、ミカはそれを止めた。
「アル、いいんだよ、正直になって」
ミカを見上げるアルは、負の感情を隠し切れずにいたことでミカを煩わせたと思ったのか、申し訳なさそう目尻を下げた。
ミカは穏やかに優しい表情をしている。
包むような柔らかな眼差しに、アルは縋るような思いで「ごめん」と小さく呟いた。
「なぜ謝るの? 必要ないよ」
「だってミカに心配かけた。きっと嫌な思いもさせた。俺、わかってるのに、頭じゃ仕方ないんだってわかってるのに、でも、納得いかなくて、悔しかったり、腹立ったり、でもミカに怒ってるんじゃなくて、誰に向けていいかも分からなくて、なんかゴチャゴチャで」
ミカの手がアルの頬をそっと包んだ。
「それが普通。無理に呑み込まなくていい。それに、アルを心配するのは僕の特権だから気にすることじゃないよ」
しばし見つめ合っているとアルの目尻からぽろりと涙がこぼれた。
「だから結婚式してくれたの? 俺のために」
「うん。僕もしてみたかったから。写真だけだけど」
「十分だよ、ミカ。すごく嬉しい」
「入社前にね、アルを安心させたかったんだ。不安を取り除くのも僕の特権だからね」
「ありがとう」
「どういたしまして」
ミカは温かいキスを送った。
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