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とある春の一日 2
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「どうしたんですか? 浮かない顔して」
ジルにそう聞かれて僕は昼食中だったことを思い出した。
いつの間にか手が止まっていたらしい。
「あ、いや、なんでもないよ」
言えるわけがない。
長期出張、それもアルにとっては初となる状況なのにアルが寂しがりもしないのが不満だなんて、口が裂けても言えない。
健気と言えば健気なんだろう。
心配かけまいとして無理しているのかも知れない。
しかし、それでも、だ。
寂しいの一言も無いというのはなんだか腹が立つ。
寂しいのは僕だけ?
僕がアルを好きなほどにはアルは僕を好きじゃない?
同じ強さ、重さで愛し合いたいと思うのはわがまま?
とにかく気に入らない。
行かないでと言われても困るが、行かないでほしいという気持ちはあるって表情にすら出してくれない。
我慢しているのか?
いや、我慢じゃなくて本当に寂しくないとしたら?
本当にアルは平気だとしたら?
僕だけが掻き乱されているのか?
僕だけが相手を好き?
僕だけが相手を必要としている?
互いにではなく、僕の一方通行? 片思い? 片‘重い’?
不愉快だ。
機嫌悪いなんてもんじゃなくなりそう。
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