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とある春の一日 3
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「どした? 腹でも痛いのか?」
食事の進まないアルをテーブルの向こうからリュカが心配してそう聞いた。
「え? あ、ううん」
フォークを持ち直したアルに、今度はリュリュが
「悩みなら聞くぞ? ただし、金の相談は受け付けないがな」
と笑った。
「何でもないよ。ありがと」
言えるわけがない。
ミカの長期出張という初の状況で自分が寂しがってるなんて、子供じゃあるまいし、言えるわけがない。
しかも口にしたら崩れそうな程だなんて、我ながら弱さに驚いてる状態で相談なんてできない。
相談じゃなくても、愚痴というか吐き出すだけでもダメだ。
そんなことしたら寂しさ倍増になってしまう。見て見ぬ振りできなくなる。
それが怖い。
自分が寂しいだなんて認めない。
寂しくない。寂しくない。
自己暗示にかけるように自分に言い聞かせ、アルは友人らに笑顔を作った。
その日、アルは大学で講義を受けながらも上の空だった。
逆にミカはアグレッシブに仕事をしてジルを驚かせた。
帰宅したアルは夕食の支度をしながらぼんやりと考えていた。
ミカに出会う前は記憶にある限り、ずっと、ひとりだった。
毎晩、誰かとベッドを共にしたとはいえ、それはその場限りであり、毎日顔ぶれは違った。
だから、独りだった。
それを寂しいと思ったことは無く、寂しいと感じたことも無かった。
しかし、ミカと出会い、ここで暮らすようになって、ミカがいるのが当たり前になってしまった。
そうなるとミカがいない‘一人’は、もう当たり前ではない。
ミカとキスできない日が続くことになる。
ハグを恋しいと思うのは何日目からだろう。
アルは身震いした。
考えたくない。考えたら寂しさで潰れそう。
アルは料理に集中することで自分をごまかした。
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