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あなたを愛します 4
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翌日も病院へ行ったが、悪くなってはいないが良くなってもいないということだった。
アルは病院の自販機コーナーでぐったりとソファに身を沈めた。
社長見習いを始めて6年。
今ではミカは重要な決定にサインする以外は、むしろアルの相談役として補佐している状態だ。
リタイアしたら何しようかと笑いながら話すミカに、アルはまだ早いと引き留めたものだった。
ミカは彼の父に似て用意周到な人だ。
自分に万一のことがあったら会社も財産も全てアルに譲ると書面で残しているし、生命保険の受取人はもちろんアルになっている。
だからミカは「いつ死んでも大丈夫だ」と笑って言うが、その度にアルは「100歳まで生きてて!」と答えていた。
ミカのリタイア後の夢は山奥でペンションだったらしいが、今は現実的に考えてどこかで喫茶店でも開こうかなと考えている。
…と言ったらアルが「下の喫茶店でいいじゃん」と言うので、ミカはぼんやりとそれもいいかなと考えていた。
ウィリアムズ商事の経営は順調で、最近では食の安全に関するセミナーなども開いている。
取り扱っている商品の宣伝を兼ねた料理教室も、以前は不定期だったが今は定期的に行われるようになった。
アルは未だに自分が社長の座を継ぐことが不思議でならず、実感を伴っていなかった。
しかし、ミカがこうして事故に遭い、亡くなるかもしれないという状況になって、それは現実味を帯びて迫っていた。
幹部たちとは連絡を取り合っているが長く社長室を空けることはできない。
戻ったらミカはいない。
自分ひとりで責任を負わねばならない。
アルは手が震えた。
まだミカが必要だ。
今は支えを失いかけている。
このまま失うのだろうか?
アルはぞっとしてミカの病室に走った。
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