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あなたを愛します 6
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玄関の閉まる音がやけに大きく響く。
今日ももちろんミカはいない。
ひとりで済ませる夕食の、なんと味気ないことか。
アルはベッドに潜ると、またミカのことを考えた。
ミカは自力で呼吸できるようになってきた。
うまくいくと人工呼吸器を外せるかもしれないと医師は言った。
そうなったら意識は戻るのかとアルは勢い込んで聞いたが、答えは未知数ということだった。
生きていてくれる確率は上がったと考えて良いのだろうか?
それでも、このまま亡くなる可能性はまだ残っている。
ミカがいなくなる。
考えただけでも恐ろしい。
どんなでもいいから帰ってきてほしい。
ふと20年以上も前の出来事が頭をよぎった。
大学生だったアルがスキーへ行く途中で事故に遭い生死不明だった時、ミカはどれほど不安だったろう。
自分も当然不安ではあったが相手を失うかもしれないというものではなかった。
死ぬかもしれない、二度とミカに会えなくなるかもしれない、それが怖かった。
今ミカの命が危ない状況になって、アルはあの時のミカの気持ちが痛いほどわかった。
大事な人を失うかもしれない。生涯を共にすると誓った愛する人が二度と手を触れられぬ世界に旅立ってしまうかもしれない。
これほど怖いことは無い。
アルはミカのいないベッドで身を丸めた。
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