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あなたを愛します 18
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翌週、ミカは久しぶりに出社した。
社内ですれ違う人、皆から歓迎され、ミカは笑顔で礼を言った。
幹部たちを集めて短いミーティングをし、ミカは彼等にも礼を述べた。
ミカの机に積まれた保留のままの書類は、ごく一部を除いてアルに戻された。
「もう、アルに任せてもいい時期だと思うから」と。
ここ数週間でアルは大きく成長したはずだ。
辛苦は成長の糧となる。
アルはそれから逃げず、責任を負い、やるべきことをやり遂げた。
少しずつ手を引こう。
ミカは引退を、より現実的に考え始めた。
しかし、それを言ったら、きっとアルは慌てて引き留めるのだろう。
下の喫茶店で働きながらアルの様子をのぞきに来るのもいい。
ヴォトルキュイジンヌで店番しながら相談役やるのもいいだろう。
なんて言ったらアルはどんな顔するのかな。
ミカは悪戯する子供のような心境で口を開いた。
「でさ、僕、引退したら下のお店でアルバイトでもしようかと思うんだけど、雇ってくれる?」
アルはミカの顔を少し硬い表情で見つめた。
「だめです」
やはり引き留めにきたか。
ミカはそう思った。
しかし、続くアルの言葉に驚いた。
「社長には食の安全教室の講師を担当してもらいます。今までより頻度を増やすし、社外でも開催するようにします。提携してる農園や国内の会社とも共催するし、イベントへもブースを出します。だから、社長を退いても暇になるとは思わないでくださいね」
この男は僕を暇にする気は無いらしい。
アルの用意周到さが自分に似ていて、ミカはおかしくて笑った。
「年寄りに優しくないなぁ」
「何言ってるんですか。平均寿命まで、あと20年以上もあるんですよ」
「おいおい、死ぬまで働かせる気かい? 年金生活、楽しませてよ」
「だめです。あなたは一生、私のそばにいてもらいますから」
ミカは笑った。
幸せで笑った。
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