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pour toujours 2
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寝室のドアを控えめにノックする。
返事は無く、アルはそっとドアを開けた。
気持ち良さそうに眠っている。
「ミカ、そろそろ起きないと。夜、寝付けなくなるよ?」
アルはミカの頬を撫でた。
しかし、その温かい頬に触れてアルは気付いた。
息をしていない?
「ミカ?」
軽く肩を揺すり、もう一度呼んだ。
しかし、ミカは目を開けない。
アルはミカの手首を取り、脈が無いことを確認した。
「ミカ…?」
嘘だ。そんなわけがない。
さっきまで笑って、喋って、歩いて…。
お休みのキスが最後のキスになってしまった。
もっと心を込めてキスすれば良かった。
公園のベンチでのサンドイッチが最後の食事になってしまった。
もっと良いものを食べさせてあげれば良かった。
昨日が一緒に眠る最後の夜になってしまった。
もっと抱きしめて愛を伝えておけば良かった。
「ミカ…」
アルはミカの指輪の上からキスをした。
「ミカ、愛してる」
そして、まだ温もりの残る唇に、そっと唇を押し当てた。
「ミカ、俺、幸せだった。あなたに会えて、あなたと生きて、あなたからたくさんもらって…。まだ全部返せてない。…ミカ、いかないで」
アルは静かに涙を流しながらミカの髪を、頬を何度も撫でた。
ひとしきり泣いた後、アルは携帯端末を手にミカの隣に横たわった。
そして腕を目一杯伸ばして写真を撮った。
ミカは亡くなっている。
つまり、ここにあるのはミカの遺体だ。
死体と頬寄せ合って写真を撮るなど狂気の沙汰だろう。
しかしアルは他人がどう思おうと、どう思われようと関係無かった。
ミカはミカで愛しい存在だ。
これが最後のチャンスなら逃したくない。
画像を確認すると、それは眠る恋人の隣で寝顔を撮ろうと悪戯したツーショット写真のように見える。
しかしアルの顔は笑うべきなのか泣くべきなのか迷ったままで写っていた。
アルは少し冷えたミカの唇に、もう一度キスをした。
「ミカ、愛してる。ありがとう。俺も幸せだった。ありがとう、ミカ。愛してる。この先も、ずっと」
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