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arbre généalogique ~mére~ 1
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「社長、こちらは開封して良いか判断できなかったので中の確認はできていません。どうしますか?」
アルがいくつかの郵便物を渡し、その後に一通の封書を差し出した。
会社や団体などから来るものはアルがあらかじめ開封して中身を確認する。
ただのDM等にミカの貴重な時間を取らせるわけにはいかない。
しかし、その上品なクリーム色の封筒に書かれた宛名は手書きで、エアメールのスタンプが押してある。
差出人は Hely Harjula。
「…エリ・アルジュラ…?」
「お知合いですか?」
「いや…」
ミカは慎重に封筒を開けた。
中からは同じクリーム色の便箋。
広げて読むミカの顔をアルは心配そうに見つめていた。
読み進むにつれてミカの表情が驚きから悲しそうになり、そして考え込むように目をつむる。
唇を固く結び、数秒間、何かを思案した後、ミカは瞼を上げ口を開いた。
「少し考えないといけないから保留ね」
「はい」
「大丈夫。変な内容ではなかったよ」
アルを安心させようと、ミカは微笑んだ。
数日してミカはアルに例の手紙のことを話してくれた。
「あれね、母からだった」
「え? お母さん?」
アルは飲もうとした赤ワインのゴブレットをテーブルに戻した。
「うん。名前、ヘリュ・ハルユラって読むらしい」
「内容は…? あ、俺聞いていいの?」
テーブルの上の小さなカッティングボードに乗るロックフォールをペティナイフで切り取り、ミカは頷いた。
「うん、アルも一緒に行って欲しいんだ」
「行く? どこに? フィンランド?」
アルの矢継ぎ早の質問に笑いながら、ミカはロックフォールをつまんで口に放った。
「だから秘書くん、スケジュール調整して4日、できれば5日休めるようにして」
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