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arbre généalogique ~mére~ 3
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彼等の家は本当に童話の世界から抜け出してきたようなログハウスで、ミカとアルが驚いたのは玄関で靴を脱ぐという習慣だった。
風除室を抜けるとキュヨスティが迎え入れてくれた。
大柄でひげを蓄えた彼の青い瞳は、その色に反してとても暖かだった。
「遠い所を良く来てくれました」
彼はすぐに広いリビングへとミカ達を案内した。
ヘリュが寂しくないようにベッドをリビングへ移したのだという。
暖かな部屋の一角で彼女は穏やかな表情をして眠っていた。
「ヘリュ」
キュヨスティがそっと揺すると、彼女はゆっくりと目を開けた。
「フランスからお客様だよ」
その言葉にヘリュが大きく目を見開く。
そして、夫の後ろへ目線を動かした。
半世紀近く会っていなかった息子の姿に彼女は声も出せずに涙をこぼした。
キュヨスティの助けを借りて上半身を起こしたヘリュはミカを抱きしめた。
「ミカ」
ミカは手紙を受け取ってから電話をかけるまでの間、かなり迷っていた。
内容が本当かどうかではなく、本当だったとしても会いに行くかどうかで。
ミカの父と母はミカが2歳の時に離婚した。
だからミカには母の記憶は無い。
確かに血は繋がっているだろう。
しかし、それだけだ。
育ててくれたのは父で、家族として一緒に住み、過ごしたのは父だけだ。
だからと言って母に恨みがあるわけでもなく、かといって会いたくて仕方がないという気持ちも持ったことは無かった。
もしかしたら子供の頃に、そう思ったことがあったかもしれないが覚えていない。
今も、無い。
だから今、母が余命わずかと聞いても動揺は無く、生きてる内に会わなくてはと急く気持ちも湧いてこない。
自分は悲しいだろうか? 母に会えたら嬉しいだろうか?
むしろ素っ気ない顔をして彼女を傷付けてしまうのではないか?
ミカは自分の感情が予測できなくて迷っていた。
しかし、今、母に抱きしめられて、来て良かったかもしれないとミカは思った。
彼女は涙して喜んでくれている。
自分達の訪問を待ち焦がれてくれていた。
ミカはそっと抱き返し、ヘリュの背を柔らかくタップした。
「久しぶりね、ミカ」
嬉しそうにミカの頬に手を当て、ヘリュが微笑んだ。
ミカは戸惑いながら、ぎこちない笑顔でそれに答えた。
「はい…あの、でも、ごめんなさい、僕にとっては初めまして…に、なります」
はっとして、それから悲しそうに笑い、ヘリュはミカの髪に指を通した。
「そうよね。ごめんなさい。ミカ、まだ小さいあなたを放って私はー」
「あの」
ミカが彼女の言葉を遮った。
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