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arbre généalogique ~mére~ 5
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ヘリュが疲れるだろうからと、少しだけ話をした後、シニッカはミカとアルをゲストルームへ案内した。
「これから夕食作りますけど、何か食べられないものあります?」
「無いと思います」とアルが答え、「手伝いますよ」とミカは言ったが、シニッカは「お疲れでしょうから休んでてください」と、そこを出て行った。
ため息をついてベッドに腰かけると、向かいのベッドに腰かけようとしていたアルをミカは呼んだ。
ミカの表情を見てアルは彼が何を欲しているかを悟り、ミカの前に立つとかがんで彼を抱きしめた。
「僕は冷たいだろうか」
「どうして?」
「母と呼んであげられてない。…それに…まだ小さかった僕を置いて帰国した罪悪感を彼女は抱えているんだと思う。死ぬ前に僕に言い訳したいんだ、きっと。ある意味、懺悔だよ。なのに僕はそれを止めた。謝罪を断ったようなものだ。…死を目前にした人にする態度ではないよね…」
「ミカは聞いてあげたい?」
アルは俯いて表情の見えないミカに優しく問うた。
「聞いた後、彼女にどんな感情を抱くのか予想ができない。もし、嫌な感情を持ってしまったら彼女と笑って話せなくなりそう」
「なら冷たくないよ。優しいよ」
「死を前にした人なのに、僕は泣いてない。それでも?」
「悲しくないのに泣くの?」
「悲しくないなんて、そんな自分が悲しいよ。仮にも母なのに」
「でも、初めて会ったんでしょ?」
「うん、僕としては初めまして…だね」
「知らない人のために、ミカは泣くの?」
「そんな場合もあると思うよ?」
「そうじゃなくてさ、ミカは彼女を肉親として見てる? 見れてる?」
ミカはようやく顔を上げた。
「…最近知り合った知人…? 縁遠かった親戚? …そんな感じ。…母に対して、やっぱり僕は冷たいよね」
困惑した表情で答えるミカに、アルはそっとキスをした。
「ミカ、自分を責めないで。正直なだけだから。嘘をつかずに彼女に配慮するのは難しいのかもしれない。でも、彼女を喜ばせたいのなら嘘ついてもいいと思う。もちろん、誠実さがミカの良い所だから、それはミカが決めていい。俺はミカがしたいようにすればいいと思うよ。もう、時間は限られてるから。何を選んでも、俺はミカが好きだよ」
もう一度アルは優しくキスをした。
「アル」
アルはミカの不安定な気持ちを包むかのように柔らかく彼を抱きしめた。
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