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ふたりで①
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無事家に着くと、俺は合鍵で扉を開け、中に入った。その後に、一ノ瀬くんも入って来る。
「失礼します」
一度来ているが、一ノ瀬くんは丁寧に挨拶をして足を踏み入れた。
前は仕方無くだったけど、自分から男性を家に入れるなんて何年ぶりだろうか。密室に男性といるというのが怖くて、今までは入れてこなかったのだ。
しかしそれは、裏を返せば一ノ瀬くんならいいと、自分の中で思っているから。一ノ瀬くんは特別だっていうのが、どこかにあるのかもしれない。
「…適当に座ってください」
部屋に入りそう促すと、一ノ瀬くんは普通にテーブルの横に座った。
場所は、前に一ノ瀬くんが料理を置いてくれていたところであり、俺が基本的にいつもいる部屋だ。
「すみません、突然誘ったりして」
言いながら、俺も一ノ瀬くんの正面に座る。
「それは大丈夫ですけど、何か用事ですか」
「いや、あの……」
今頃になって、何か恥ずかしくなる。
主体の歓迎会の後に、こんな小さなお遊びみたいな。一ノ瀬くん、本当は迷惑じゃなかったかな。
「俺、あの歓迎会には参加してるってだけだったし、それだとお祝いって感じしなくて……だから個人で一ノ瀬くんを祝いたいな、なんて思ったんです……」
自身無さ気に言って、羞恥から顔を伏せてしまう。
一ノ瀬くん、顔には出さないけど、こんなことで呼びやがって!って思うかな。面倒、って思うかな。
もしそうだったらどうしよう。
次第に、やっぱり誘わなきゃ良かった、なんて考える。背伸びし過ぎたんだ。
「一ノ瀬くん……?」
しかし、なかなか返ってこない言葉に、不安になった俺は顔を上げた。
「……っ?」
「佐伯さん……」
するとその先で、一ノ瀬くんは俺と同じように顔を赤くしていた。いつもの無表情が崩れていて、俺は驚く。
「俺、どうしましょう……?」
一ノ瀬くんは照れを隠すように、両手で顔を覆った。
何をそんなに赤くなる必要があったのだろうか。こっちまで恥ずかしくなる。
すると、ふいに顔を見せた一ノ瀬くんは、今まで見せたことの無いような表情で、ふにゃ、と笑った。
「すごく嬉しいです」
どうやら感情が抑え切れず、そのまま顔に出てしまっているようで。歳相応な若者らしい表情だった。
そんなに素直に喜んでもらえると、俺も嬉しくなって、つい頬が緩む。
「良かったです」
俺がそう言うと、次に一ノ瀬くんは、ちょっと切ない表情で笑う。
「…佐伯さん、初めて俺に笑ってくれました」
「え?そうかな……」
自分ではそんな自覚は無かった。
でも何だか、俺が笑うだけで喜んでくれる一ノ瀬くんが、愛らしく思えた。
だけどだんだん恥ずかしくなってきて、俺は本題に入る。
「あ、それで俺、一ノ瀬くんに料理作ってあげようと思ってたんですけど……食べられますか」
一ノ瀬くんは、あんまり焼き肉は食べていなかったらまだ満腹では無いと思うが、一応聞いてみる。
「はい、食べたいです」
その時の一ノ瀬くんの表情は、何と言うか、そう──
──キラキラしていた。
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