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昨日の買い物であれ程何を作るか迷ったのに、結局出来上がったものはカレーだった。
小学校のキャンプかよ、ほんと。勿論、そんなに時間は掛からずできる。
それに、待っているのも暇だからと、一ノ瀬くんも手伝ってくれた。特に何をするでもなく、普通に手伝ってくれて。
その際、初めて一ノ瀬くんの料理姿を見たのだが、結構家で自炊をしていると伝わってくるくらいに、色々な作業が手慣れていた。
「カレー、久し振りに作りました」
一ノ瀬くんがそう言いながら、カレーをご飯の上によそう。さすがに二人分だと、カレーは少し余った。
「俺が持ってくので、一ノ瀬くんは座っててください」
「はい。すみません」
キッチンから距離が遠い訳では無いが、今日は一ノ瀬くんの為の会だから、これくらいはしないといけない。
「…どうぞ」
そっと一ノ瀬くんの前に皿を置く。
「ありがとうございます」
料理を作る前まで、可笑しくなっちゃったんじゃないかというくらいにこにこしていた一ノ瀬くんだが、今はいつも通りの表情に戻っていた。
「じゃあ、いただきます」
一ノ瀬くんは、手を合わせた。それを、俺も真似する。
一人暮らしだから、いつもは何も言わずに食べていたけど、誰かがいるって、案外楽しいかもしれない。
「いただきます」
俺はカレーライスを口に運んだ。
▽ ▽ ▽
それからひと皿食べ終え、俺は一ノ瀬くんの分の皿もキッチンへ持って行く。洗い物は一ノ瀬くんが帰った後でいいだろう。
それで、次はケーキを食べてもらいたいけど、やっぱり買い過ぎたなぁと躊躇う。絶対に食べられない、あの量は。
あんな量のケーキを買うなんて、俺は一体何をしているんだか。
俺は冷蔵庫の取っ手に手を掛けながら静止した。
もういっそのこと、一ノ瀬くんに食べられるか聞いてみた方がいいだろうか。
でも、もしいらないなんて言われたら、あのケーキ達は俺が食べなければいけない羽目になる。最終的には、お金の浪費だ。
どうしよう。
とりあえず談笑でもして腹を空かすか。それなら食べられる?
いや、それには相当な時間を要するし、一ノ瀬くんだって暇じゃないから駄目だ。わざわざケーキの為にだなんて馬鹿馬鹿しい。
どうせ使ったのは俺のお金だし、ケーキのことは忘れたことにしていいかな。何日かに分けて食べれば、あの量でも食べ切れるはずだ。
俺は悶々と考え、溜息を吐いた。
「もういいかな……」
「どうしたんですか」
すると、背後から一ノ瀬くんの声。
「っ!?」
俺は思わず身構えてしまうが、一ノ瀬くんの顔を見てホッとする。
どうやら、俺が戻って来るのが遅くて来てくれたようだ。
「具合、悪いんですか」
挙句の果てに心配される始末。冷蔵庫に手を付いて俯いていたら、そう見えるのだろうか。
「あ、いえ」
ケーキのことをすぐには口に出し難くて、俺はキッチンの流しに向かう。
「洗い物……しないといけませんね」
「…それなら、俺も手伝います」
一ノ瀬くんは前に料理を作ってくれたときのように、服の袖を捲った。
一ノ瀬くんには座っていて欲しかったが、多分それでも手伝うと言うだろうから、俺は何も言わない。
「……あの、一ノ瀬くん」
俺は皿を洗いながら、一ノ瀬くんに話し掛けた。
まずはケーキを食べるか聞いてみて、それから判断すればいい。
「はい」
一ノ瀬くんはこちらを見ることなく、言葉を返す。
「今、結構お腹いっぱいですか?」
「いや、まだ食べられることには食べられます」
微妙な答えだ。
まだ食べられるけど、好んで食べようとは思わないといった感じだ。まぁ、それはそうだよな。
「じゃあ、ケーキ……とかは」
少し控えめに聞いてみる。一ノ瀬くんは皿に付いている洗剤を流し、答えた。
「普通に好きですね」
「食べられますか……?」
洗い物が終わり、水を止める。
「食べられますよ」
一ノ瀬くんは、無理をしている様子も無く言った。しかし、俺がケーキを買っているということは、既に分かっているようで。
「あ、それならケーキ持って行くので、部屋で待っててください」
実は、ケーキの箱は二つある。
それをすぐに見られたくなくて、俺は一ノ瀬くんを部屋に帰した。
でもとりあえず、ケーキが無駄になることはなくなったので、安心だ。
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