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③
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──ガチャ
扉の開く音に、顔を上げた。
一ノ瀬くんは驚くでもなく、俺を見て声を掛ける。
「…佐伯さん」
一ノ瀬くんの手には、カバン2つと、俺のコートが腕に掛けられていた。
「大丈夫ですか。立てます?」
無表情だけど、優しい口調で問い掛けられる。
だけど、立つのは無理だ。
もう擦れるだけで、痛くて苦しい。
俺は首を横に振って、一ノ瀬くんに示す。
「分かりました」
どうするのかと思っていると、一ノ瀬くんは背中と太腿に手を添えてきた。そんなことにもいちいち反応してしまい、ビクリとする。
「抱いて行きます」
そう言う一ノ瀬くんは、荷物を玄関に置いて、そっと俺を持ち上げた。また、前と同じ抱え方で。
「……っ」
そうして連れて来られた寝室で、ゆっくりと仰向けに、ベッドへ降ろされる。そして、一ノ瀬くんも俺の隣に上がった。
「自分でできますか」
一ノ瀬くんは、俺の溢れそうな涙を拭いながら、聞いてくる。さっきから、泣いてばかりだ。
「……すみません……俺、こういうの自分でしたくないん、です……気持ち悪っ、くて……」
自慰なんてしたくない。だけど、これを収める方法も分からない。
元々、男性恐怖症になってから、自慰はほとんどしたことがなかった。周りの男性も普通にしていると思ったら、その行為自体が気持ち悪くて出来なかった。
すると、一ノ瀬くんは俺の方に身を乗り出してくる。
「…じゃあ、触っていいんですか」
「へ……?」
つい間抜けな声が出る。
一ノ瀬くんは、冗談じゃなくて真面目に言っているようで、逆に言葉に困った。
「なん、で……」
「佐伯さんが嫌ならしませんけど、そのままじゃ、苦しくないですか」
疚しい気持ちで言っている訳ではないと分かっているから、その申し出を断るのは心苦しかった。一ノ瀬くんはあくまで、俺の為を思って言っている。
どうして俺は、一ノ瀬くんならいいだなんて思ってるんだろう。早くこれを収めたいって焦りからかもしれないけど、少なからず一ノ瀬くんを許容しようとしている。
「でも……」
俺は何が言いたいのか。
一ノ瀬くんを否定する理由が見つからない。
「…痛く、しないですか……?」
「はい」
こんなの、断れない。
どうしたらいいの?一ノ瀬くんに、任せていいの?
助けて。何も分からない。
「…触っていいですか」
もう一度聞かれ、俺は躊躇いつつも小さく頷いた。
「いい、です……」
一ノ瀬くん、俺はどうしたらいいの。
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