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(いない……)
食堂には来てみたものの、そこに世良さんの姿はなかった。何せ会社は広いから、そう簡単には見つからないということだろう。
「次、どこ当たってみますか」
一ノ瀬くんに聞かれるが、いつも俺に関わってくるのはあっちからだし、神出鬼没の世良さんがいる場所なんて分からなかった。
「…喫煙所、とか……?」
ただの思いつきだが、もしかしたらいるかもしれない。
「世良さんって煙草吸うんですか」
「分かりませんけど…」
でも、行ってみないことには分からない。いつまでも休憩の時間がある訳ではないから。1時間のうちに何かしらは言ってやりたい。
▽ ▽ ▽
そして喫煙所にやって来たものの、やはり世良さんはいない。
(………)
やっぱり、世良さんは煙草なんて吸わないのか。だとすると、世良さんのいそうな場所ってどこだろう。
ただただ、時間だけが過ぎて行く。
「他行きますか」
「すみません。こんなことに付き合わせてしまって……」
こんな個人的なことに長々と付き合わせて申し訳ない。一ノ瀬くんは何も関係無いのに、時間ばかり奪ってしまっている。
「次の場所にいなかったら、俺一人で捜します」
もし世良さんと二人きりになった場合は、とりあえず言いたいことだけ言って、あとはダッシュで逃げよう。それなら襲われないはずだ。
「……佐伯さん」
喫煙所を出ようとしたところで、一ノ瀬くんに名前を呼ばれる。
「佐伯さんと世良さんを二人にしたら、絶対にまた嫌なことされますよ。多分世良さんの方が力強いですから、簡単に逃げられるなんて考えないで、俺のこと頼ってください」
まるで俺の脳内を読んだみたいな言い方だ。そんなに思考が表に出てしまっていたのだろうか。
「いや、でも一ノ瀬くんには関係無いのに、迷惑じゃないですか」
「関係ありますよ。佐伯さんが世良さんに触れられるのは、俺だって嫌ですから。それに迷惑なんかじゃ無いですし」
一ノ瀬くんが嘘を言っているようには見えない。
どうして一ノ瀬くんはこんなにも親切にしてくれるんだろう。これじゃあ、いつか一ノ瀬くんとの縁が切れるのが怖くなってしまう。
「…気を遣わなくてもいいですよ」
今のうちから、一ノ瀬くんを遠ざけた方がいいのだろうか。
だって、一ノ瀬くんは男性で、俺は男性恐怖症。ずっとこんな風に一緒にいたら、一ノ瀬くんを傷付けることしか、俺には出来ないんじゃないの?
「……ごめん、なさい……」
俺がそう言った時。
「あれ、陽裕くんと遥斗くんだ」
喫煙所に入って来たのは、世良さんだった。
俺の一ノ瀬くんに対する思考は、プツリと途絶える。
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