アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
③
-
「世良さん……」
また何かされるんじゃないかと思うと、身体が震えそうになった。こっちから世良さんを捜していたのに、突然遭遇すると驚きで言葉が出ない。
「ん?どうしたの、陽裕くん」
「ちょっと話があります」
一ノ瀬くんは、俺に伸びて来た世良さんの腕を掴み、先に話を切り出してくれた。
「何?大事な話なら別の部屋に移ろうか」
決して楽しい雰囲気では無いだろうに、世良さんは笑顔でそう持ち掛ける。本当に、この人は何を考えているのかが分からない。
「そうしていただけると有り難いです」
「じゃあ、会議室にでも行こうか」
世良さんが喫煙所を出た後をついて、俺と一ノ瀬くんは会議室へ向かった。
▽ ▽ ▽
会議室に着くと、三人で中に入り最後の俺が扉を閉めた。鍵は開けてあるから、幾分か安心だ。
「…それで、話って何?」
世良さんは長テーブルに浅く腰掛け、最初に口を開いた。さすがにこれは俺から言うべきだと思い、一ノ瀬くんより先に話し始める。
「あのですね、俺、世良さんにお願いがあるんです」
「お願い?」
「はい」
言わなきゃ。
そんな気持ちとは裏腹に、俺は俯いた。
嫌なこと言って、世良さんの怒りを買ってしまわないだろうか。もし俺の言いたいことを言ったら、もっと酷いことされないかな。
あんな思いをするのはもう嫌だ。
そう思うと、なかなか言葉を続けることが出来なかった。
「陽裕くん?」
「世良さん、佐伯さんは…」
一ノ瀬くんが俺の代わりに言ってくれようとしたけど、これは俺から言いたい。
俺は一ノ瀬くんのスーツを掴み、一ノ瀬くんの言葉を止めた。
「…俺が、言います」
「大丈夫ですか」
「大丈夫です」
俺は前を向き直した。世良さんは首を傾げる。
「…世良さん、もう今後は、会社で俺に関わらないで欲しいんです。男性に触れられるのが、嫌で……それに、あんな風に接されたら、世良さんのこととか、怖くなって……」
「いいよ」
「え?」
世良さんはあっさり受け入れる。
予想もしていなかった素直な承諾に、俺も一ノ瀬くんも驚く。世良さんはテーブルから降り、こっちに近付いて来た。
「まぁ、条件付きだけどね」
「条件?」
一ノ瀬くんがオウム返しする。
淡い期待も崩れ去ったと思ったが、その条件とやらをクリアすれば世良さんは俺に関わって来なくなるんだ。
俺は気を持ち直した。
「そう、条件。聞きたい?聞きたいよね」
「早く言ってください」
世良さんを毛嫌いしている一ノ瀬くんの口調は、自然と強くなる。
「じゃあねぇ」
世良さんはにこりと笑った。
「二人さぁ、付き合ってよ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 331