アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
③
-
そうして、一ノ瀬くんと特別に何も関わらないまま、日にちだけが次々と過ぎて行った。毎日のように送られてきた、お疲れ様ですと言うLINEも、水曜日で途絶えている。
どうしたら、元の関係に戻れるのか。
いくら考えても分からなかった。
謝ればいいのかな、なんて思っても、何について謝れば良いのかも分からない。
本当にこのまま、一ノ瀬くんとの関係が終わってしまうのではないかと不安になった。
金曜日。まだ金曜日だ。
一ノ瀬くんの関わらない日々って、こんなに退屈だったんだと薄々感じる。でも、俺の人生、前まではそれが当たり前だった。
どうしてなんだ。あんなに男が嫌いだったのに、ここまで生活が乱されるなんて有り得ない。
だけど、ここまで一ノ瀬くんに揺すられているのは事実で、実際、こんなにも一ノ瀬くんのことばかり考えている。
一ノ瀬くんのことでいっぱいだ。
男が嫌いな俺が、その男に縋りそうになっている。
自分で自分が分からなかった。
「陽裕くん」
一ノ瀬くんが席を外れた後で、久々に世良さんが話し掛けてきた。
あの日以来、世良さんは本当に俺に接して来なかったから、すごく久しい感じがする。
「…何ですか」
俺が顔を上げると、それを見た世良さんがははっと笑った。
「陽裕くん元気無いねぇ」
そして、今いちばん触れて欲しくないことに、世良さんは突っ込んでくる。
「もしかして、遥斗くんとケンカした?」
「は……?」
それをヘラヘラと言われるから、余計に苛ついた。こっちは真剣に悩んでるのに、世良さんは他人事だ。
そもそも、と考えると、世良さんが変な条件を出してきたからこうなったんじゃないのか?
なんの根拠も無いけど、一ノ瀬くんとのいざこざの原因が分からない今、それが全ての元凶だと思ってしまう。
「別に、喧嘩なんてしていません……」
「そうかな?最近、あんまり二人が話すの見た事ない気がするけど」
俺は俯いた。
世良さんに何が分かるって言うんだよ。
大切な人に避けられるって、そういう辛さが分かるのか。
今まで嫌いだった男性に優しくされて、それに揺らぐなんて情けないとは思う。だけど、それは事実なんだから仕方無い。
そんな、一ノ瀬くんに嫌われるって、本当に苦しくて、どうしたらいいのか分からないんだよ。
それも分かってないくせに、軽々しくそういうことを口にするな。
「ねぇ、二人付き合ってるんだからさぁ、もっと仲良くしようよ」
「だから……」
世良さんが無理矢理そうさせたんだろ。
世良さんがあんなこと言わなければ、一ノ瀬くんと関係がすれ違うこともなかったんじゃないのか。
もし俺に原因が無いのなら、全ては世良さんが悪い。
「…喧嘩なんてしてないです!てかそもそも、こんなことになったのは、アンタのせいでしょう!?だから、もう嫌なんです!!」
何の理由があって言っている訳では無い。
こんなの、ただの八つ当たりだ。
「俺は、アンタのことが嫌いだ!」
言いたいことを全部吐き出すと、俺は席を立ち、部室を飛び出した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 331