アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
④
-
土日が過ぎ、月曜日。
今日は、チームの人に企画書の提出を求めた3週間の期限が終了し、会議として皆で内容を話し合わなければならない日だった。
全員から集まった企画書を簡単にまとめ、昨日、一昨日は資料の作成を行った。
一ノ瀬くんのことばかり考えていてなかなか作業が進まないことにイライラしながらも、何とか月曜日までに間に合わすことができた。
▽ ▽ ▽
そんなことで皆に収集を掛け会議室にいる訳だが、一ノ瀬くんの仏頂面はいつもと変わらない。
「どうぞ…」
一ノ瀬くんの前に資料を置くと、何とも愛想の無い感じで短く礼を返された。
まぁ、そんなに丁寧にありがとうございます、だなんて言われるとも思っていなかったが。
「…はい。では今回の会議では、皆さんに提出していただいた企画書を基に、企画商品のコンセプトなどを明確にしていきたいと思います」
視界に入り込む一ノ瀬くんは、まるで俺の話になど興味が無いとでも言いたげに資料に視線を落としていた。
前回の会議とは、全く様子が違う。
「…1枚目を見てください」
だから俺も一ノ瀬くんのことなど気にしないで、ただ淡々と会議を進めた。
▽ ▽ ▽
4時間、時間が経過し、会議は滞り無く終了した。
一言残し、チームの皆は各々で解散して行く。勿論、その中には一ノ瀬くんもいた。
「…一ノ瀬くん」
だが、一ノ瀬くんが会議室を出てしまう前に、俺は一ノ瀬くんを呼び止める。
「はい」
一ノ瀬くんはこちらを振り向くが、それはあくまで仕事的な反応だ。
しかし、それではいけない。俺は仕事外での話を、一ノ瀬くんとしたいのだ。
「…今日、7時くらいまで残ってもらえますか」
いつまでもモヤモヤしているのは気持ち悪い。
返事を聞いてから俺がどうするかは分からないが、俺のことが嫌いなら嫌いで、はっきりとした答えが欲しかった。
もう、一ノ瀬くんのことばかりで悩んでいるのは苦しい。
「お願いします」
俺は、一ノ瀬くんから視線を逸らさず、真っ直ぐに言う。そうしないと、一ノ瀬くんにはぐらかされそうだった。
「分かりました」
一ノ瀬くんはそれだけ言うと、後は何も言わずに会議室を出て行った。
「………」
一人残された俺は、溜息を吐いて片付けを始める。
本当は怖かった。
一ノ瀬くんに嫌いだ、なんて言われたくないし、なぜ俺を避けるのかなんて理由も聞きたくない。
だけど、こんな経験は過去に無いから、もう本人に直接聞くしか解決法が分からなかった。
何かの勘違いだった。
一ノ瀬くんがそう言って、また元の関係に戻りたい。
それでも、一ノ瀬くんに限ってそんなことは無いって思うから、始めから身構えていないと怖い。
「……どうしよう……」
自分から残ってなどと言ってしまったが、実際は内心不安だけで、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
でも、もう後には引けないから。
俺は、深呼吸を繰り返した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 331