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怖い①
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6時30分を過ぎ、社員の半数程は帰宅したが、まだまばらに残っている人はいた。
一ノ瀬くんも、ちゃんと残ってくれている。
しかし、人が全て捌けるのを待っていたら、恐らく7時を過ぎてしまう感じだった。
(別室に移動した方がいいかな……)
さすがに他の人がいる中で、なぜ俺を避けているのか、なんて個人的な話はできなかった。と言うか、聞かれたくないし、話したくない。
「………」
何気無く一ノ瀬くんの方を見ると、一ノ瀬くんは未だに仕事を行っているのか、パソコンと向き合っていた。
何をしているのかまでは分からないが、恐らく仕事に関することだろう。結構、仕事には真剣だ。
「っ……?」
すると突然パソコンを閉じ、俺の視線に気付いていたかのようにこっちを向く一ノ瀬くん。
「…俺の家に来ますか」
「え……」
一ノ瀬くんから声を掛けてくれたことに驚き、何て言えばいいのか全て飛んで行ってしまった為、俺はとりあえず頷いた。
部署内では話せないことだと悟ってくれたのだろうか。それとも、別の理由があって?
どちらにしても、わざわざ空いている部屋を探して話すのも面倒だからありがたい。
「では行きましょう」
早くも先に帰りの支度を終えた一ノ瀬くんが、俺の準備が終わるのを待つ。
帰る支度など大したことは無いのだけれど、待たれているという緊張感から、何となく焦ってしまった。
「…すみません」
「はい」
準備を終えて、俺と一ノ瀬くんは部室を出た。
▽ ▽ ▽
タクシーに揺られていると、一ノ瀬くんと会ったばかりの頃を思い出す。
俺は一ノ瀬くんの態度にビクビクしいて、その一ノ瀬くんはただ窓の外を見詰める。あの日と同じだ。
「…ここで大丈夫です」
不意に一ノ瀬くんが言った。
タクシーが止まった場所は、勿論一ノ瀬くんの住むマンションの前。
前と同じように、俺は一ノ瀬くんの後をついて、マンションの中へと向かった。
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