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大好きです①
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「……?」
言葉にはしないが、どういうこと?と言った視線で、佐伯さんは問い掛けてくる。
「…簡潔に言うと、俺、佐伯さんに触れそうになるんです」
佐伯さんのことが気になっていると言っていた時は、まだ仲良くなりたいってだけで気持ちは止まっていた。
だけど、好きだっていうのが佐伯さんに伝わってしまった今、それに歯止めが聞かなくなってきていた。
すこし触れるくらいならいいが、もし一線を超えたいだなんて思ったらアウト。だから、その前に距離を取りたかったのだ。
「佐伯さんが好きで、本当はすごく触れたいけど、それじゃあ佐伯さんが嫌がるから。だから、もう嫌われればいいと思ったんです」
「………」
佐伯さんは驚いた表情をする。
そして、また涙を流し始めた。
「……どうして、言ってくれなかったんですか」
さっきまでの恐怖を含んだような声色ではなく、安堵したことが分かる口調だった。
「これを言ったら、佐伯さんに無理をさせそうだったからです」
俺を完全に嫌っていない状態で全てを話してしまったら、多分佐伯さんは、触れてもいいからと無理を言いそうだったからだ。
それは嫌だったから、どうしても言えなかった。
すると、佐伯さんは安心し切ったように笑い、言葉を発す。
「…嫌われた訳じゃないんですね。良かったです」
「嫌いな訳無いです。大好きですよ…」
好きってばかり言っていると、佐伯さんに手を出しそうだ。だって、こんなに可愛い佐伯さんが悪い。
「じゃあ一ノ瀬くん、今まで通りの関係に戻ってくれますか……?」
真下の佐伯さんが、優しく微笑む。
しかし、佐伯さんと仲良くすると気持ちばかりが先走り、佐伯さんを傷付けそうで怖かった。
「それは……」
「…はい」
俺が言葉に詰まっていると、佐伯さんは俺の方に両手を伸ばして来た。
「え?」
佐伯さんと初めて手を繋いだ時みたいに、俺は戸惑う。
「来てください」
赤面気味に、佐伯さんが言った。
佐伯さんは、この行動に無理はしていないのだろうか。
「…佐伯さんは、嫌じゃないですか」
そう問い掛けると、佐伯さんは頷いた。
こういうことをしてくるから、佐伯さんが大好きなんだ。手元に置きたくなってしまう。
「大好きです」
そして、俺はそっと佐伯さんを抱き締めた。
心臓がバクバクしてうるさい。こんなゼロ距離で、佐伯さんに聞こえてしまわないだろうか。
佐伯さんも俺と同じなのかな。
本当に大好きです、佐伯さん。
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