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心臓が忙しく脈打つ。
大好きだと言われたことが、すごく嬉しかった。嫌われていないことが分かって、安心した。
(あったかいな……)
やっぱり、一ノ瀬くんは温かい。
男性なのに、ひどく心地が良かった。
俺は、ぎゅっと一ノ瀬くんを抱き締める。
背中のスーツを握った。
「…一ノ瀬くん」
その状態のまま、話し掛ける。
「もしも俺に触れたいって思っても、別に我慢しなくていいですよ」
無理をして、それを言っている訳では無い。
「……嫌です」
しかし、一ノ瀬くんは小さく言った。
まだ俺に気を遣っているいるのだろうか。
「俺は、一ノ瀬くんに慣れていきたいんです。だから、少しずつ触れてください」
こうして抱き締め合えるのなら、少しくらい触れられたってどうってこと無いだろう。
それに、それなら、一ノ瀬くんに対する恐怖は無くなる気がした。俺だって、一ノ瀬くんと同じ好きを、一ノ瀬くんに返してあげたいから。
もっともっと、俺の中で一ノ瀬くんを、特別な存在にしたい。好きになりたい。
この口で、大好きだって、言えるようになりたいと思った。
「…佐伯さんは、恋愛対象で見てる俺が触れてきても、怖くないんですか」
様子を窺うような声色で問い掛けられる。
多分それを、一ノ瀬くんはいちばん気にしているのだろう。だけど、一ノ瀬くんになら、触れられても全然平気なんだ。
だって一ノ瀬くんは、俺の大切な人だから。
「一ノ瀬くんだから、怖くないです」
「そうですか」
俺は、更に強く一ノ瀬くんを抱き寄せた。
それと同じだけ、一ノ瀬くんの腕にも力が篭もる。
一ノ瀬くんの俺に対する好きが、痛いくらいに伝わって来て、思わず涙が零れた。
好きだと言えない悔しさ。一ノ瀬くんから受け取った、"好き"の嬉しさ。愛されることの喜び。
全ての感情が溢れる。
「一ノ瀬くん、ごめんなさいっ…」
今は、一ノ瀬くんと同じ分の好きが返せない。
それなのに、どうしてこんな俺を好きになったの?
ごめんね。傷付けているのは、一ノ瀬くんじゃなくて、俺の方だ。
「…いつか、俺に好きだって言ってください。一度でも、佐伯さんの本心でそれが聞けたら、俺はそれで、十分嬉しいです」
なんて優しく言うから、俺はどんどん一ノ瀬くんに溺れていくんだ。
「ありがとう……」
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