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「………」
俺からそっと離れた一ノ瀬くんは、愛しいものを見るような目で、俺の顔を見下ろした。
分からないけど、何かドキドキする。
それは一ノ瀬くんも一緒なのだろうか。
「…佐伯さん」
その声は温かくて、それだけで心が満たされるような気がした。
一ノ瀬くんは、俺の頭を撫で、髪を梳く。
「1つ、俺のお願い聞いてくれますか」
「っ……」
どうしよう。雰囲気に飲まれている。
一ノ瀬くんの長い指が触れる唇が、熱を持ったように熱い。俺は一ノ瀬くんを見詰めるだけで、何の抵抗も出来やしなかった。
一ノ瀬くんの"好き"が、たくさん伝わってくる。
「キス、したいです」
直球で投げられた言葉に、俺は目を伏せた。
俺が嫌だと言ったら、一ノ瀬くんはキスなんてしないだろうけど、それじゃあまた一ノ瀬くんに我慢をさせてしまう。
触れたい時に触れてもいいと言ったのは俺だ。
キスを拒むことは、一ノ瀬くんを傷付けるってことになるのかな。
それなら、全てを受け入れたい。
一ノ瀬くんが俺にしてくれるように、たくさん一ノ瀬くんを愛したい。
これは、その為の一歩だ。
俺は、控えめに小さく、コクンと頷いた。
そして、一ノ瀬くんの手のひらが俺の頬に触れる。優しく触れた手に、僅かの恐怖も感じない。
「……っ…」
重なった唇はただ触れるだけで、だけど甘い。
思考がフリーズし、脳みそが溶けそうだった。
ずっとこうしていたいと思えるくらい、頭が麻痺する。
俺は、一ノ瀬くんの背中に手を掛けた。
体温が高くて、全身が火照る。
「……怖くないですか」
顔を離し、一ノ瀬くんが問い掛ける。
怖かったら、こんなに大人しくしていない。
寧ろ、一ノ瀬くんに求められていることが嬉しかった。
「嬉しい…です……」
正直に言うと、一ノ瀬くんは顔を赤くして笑う。本当に喜んでいるときの表情だ。
「その言葉が、嬉しいです」
あんなに拒絶していたのに、こんなに一ノ瀬くんに好かれていいのだろうか。
それなら、俺も一ノ瀬くんに寄り添っていたいと思う。
「佐伯さん、好きです…」
さっきまでの不安が嘘のように、今はすごく幸せだった。
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