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デート【1】①
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朝、自分の部署へ出勤する為、廊下を歩く。
割と企画部はマイペースで、出勤30分前となると、ほとんど人は通らない。
もっとお偉いさんとなると早く出勤して来るのだろうが、うちの部署は他の社員と同じくらいの早さに出勤して来ていた。
そうしてぼんやりと歩いていると、自然に一ノ瀬くんのことを考えてしまう。
(大丈夫かな……)
昨日は仲直りしたような感じだったけど、もし気が変わってまた避けられたら、と仮の出来事にも不安になる。
一ノ瀬くんに会うのが緊張した。
「佐伯さん」
「えっ?」
突如頭に乗せられた手の感覚に、思わずビクリとして退けた。視線を少し上に上げると、そこには一ノ瀬くんの姿。
「あ、すみません」
一ノ瀬くんは咄嗟に手を引く。
いつもは俺よりも早く来ているから、こんな時間帯に会うのは初めてだった。もしかして、俺の出勤する時間に合わせて出勤してくれたのだろうか。
なんて、自惚れ過ぎかな。
「あの…」
触れてもいいと、昨日言ったのは俺なのに、やっぱり反射条件で拒んでしまった。何年も掛けて染み付いた反射行動は、なかなか簡単に治るものでもない。
だけど、いつかは一ノ瀬くんに対する男性恐怖症は克服したいから。
「……佐伯さん?」
俺は一ノ瀬くんの手を取り、自分の頭にポンと乗せる。一ノ瀬くんは不思議がっていたが、次第に弾かれたように笑った。
「それは、触ってもいいってことですか?」
「そうです……」
笑われたことが恥ずかしくて、若干下を向く。
すると一ノ瀬くんは、何度か優しく、俺の頭を叩いた。
何だか、年上の人に宥められているみたいだ。だけどそれすらも心地良くて。
「ありがとうございます」
そう言うと、一ノ瀬くんは手を下ろした。
そして、再び歩き出すと同時に、また一ノ瀬くんが口を開く。
「佐伯さん」
一ノ瀬くんの隣を歩きながら、俺は返事を返した。
「…土曜日、デートしませんか」
俺の方を向いて言うから、言葉を忘れ掛ける。
デート。何度もそのワードを頭の中で反復した。
デート……デートとは、二人きりで出掛けること。二人でどこへ行くのだろう。
まだ付き合っている訳ではないが、考えるだけで嬉しくなってきた。
本当に、デートが俺となんかでいいのだろうか。
そう思っても、やっぱりどこか嬉しくて。
「デート…」
「そう、デートです。駄目ですか?」
俺は、ブンブンと首を横に振った。
「駄目じゃないですっ、行きたいです!」
声が大きかったかと、手で口を塞ぐと、一ノ瀬くんはまた楽しげに笑う。
一ノ瀬くん、今日はよく笑うなぁ、なんて思った。
でも、笑っている一ノ瀬くんが、俺はいちばん大好きだった。
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