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④
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結局、ずっと恋人繋ぎをしたままカフェに来た。
照明が明るく、雰囲気の良い店だ。
さすがに店に入る前には離してくれたが、外にいる時は同じ会社の人がいないか気が気じゃなかった。
もし部下と仲良く手を繋いでいるだなんて知れたら、うちの部署にはすぐに広まるだろう。それだけは御免だ。
「…何頼みますか」
メニュー表を広げた一ノ瀬くんが、ふと声を掛けてくる。
「え、ああ……」
羞恥から開放された安心感から、ボーっとしてしまっていた。俺は、広げたメニュー表に目を通す。
だが、メニューはやたら多くて、すぐには決められない。
「…じゃあ俺は、ナポリタンにします」
一ノ瀬くんは先に決めてしまった。
俺は何にしようか悩むが、こういう時に頼むものは大抵オムライスに決まっている。
「オムライスで」
「はい」
メニュー表を閉じた一ノ瀬くんは、近くを通ったウェイトレスを呼んだ。
そして、愛想の良さそうな若いウェイトレスが、注文を取りにこっちのテーブルまで来る。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「はい。ナポリタンとオムライスをお願いします」
女性は注文を聞いてハンディを押し、それから飲食店らしく確認を取った。
「ご注文を確認させていただきます。ナポリタンとオムライスが1つずつでよろしいですか?」
「はい」
「かしこまりました」
ウェイトレスは、軽く頭を下げてからテーブルを離れて行った。
「…オムライスが好きなんですか?」
それから、一ノ瀬くんにそんなことを聞かれる。
でもまぁ、オムライスは普通に好きだった。
「好きですよ」
じゃあ、と一ノ瀬くんは少しこちらに身を乗り出す。
「次はオムライス、佐伯さんに作ってあげますね」
その言葉は、裏を返せばどちらかの家に行くと言うことで。一ノ瀬くんがそこまで考えて言っているのかは分からないが、そういうことだ。
「それなら、俺はナポリタンですね」
一ノ瀬くんに作ってもらってばかりだし、俺だって作ってあげたいと思う。一応、自炊はしてるから。
「そうですね」
一ノ瀬くんは微笑んだ。
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