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「ふぅ……」
長い2冊を読み終えると、俺は背凭れに深く座り直し、身体を伸ばした。思ったより面白くて、休憩無しに読んでしまった。
「………」
一ノ瀬くんも読み終わったかな、と視線だけを前に向ける。
(…寝てる?)
しかし、一ノ瀬くんは本を横に置き、テーブルに突っ伏していた。横を向いていて寝ているのかは不確定だったから、少し身体を移動させてみる。
(寝てた……)
いつもは無愛想な顔をしている時が多いけど、こうして寝顔を見ると、可愛く思えてしまう。
「ふふ…っ」
ほっぺたを突いても一ノ瀬くんは気持ち良さそうに寝ていて、起きる気配は無い。
俺は、一ノ瀬くんの隣に行ってみた。
(うわ……)
よく見ると結構顔が整っていて、綺麗だな、と思う。彼女、とかは尽きないのだろうか。……なんて余計なことまで考えた。
「一ノ瀬くーん……」
耳元で囁いてみる。すると、急に一ノ瀬くんは目を覚ました。まだ眠そうだけど。
「んー……」
「起きないんですか?」
そう言うと、一ノ瀬くんに頬を指で押される。
「…なんですか」
「お返しですよ」
その時の一ノ瀬くんの表情には無邪気さが含まれていて。俺はただ、一ノ瀬くんから目を逸らすことしか出来なかった。
「……帰りましょう」
「そうですね」
一ノ瀬くんはゆっくりと起き上がると、伸びをして立ち上がった。
そして互いに本を返してから、図書館を出る。
「雨だ……」
しかし、外は生憎の雨だった。壁が厚かったのか何なのか、図書館の中にいると雨音は聞こえなかったから気付かなかった。
「どうしますか」
「どうしましょう……」
土砂降りという訳では無いが、小雨という訳でも無い。でも、これは歩いては帰れない雨だ。
加えて、外は暗くなり始めている。
「…近くにコンビニありましたよね」
「ああ、確かありました」
まさか、コンビニまで濡れて行く気だろうか。それならまだ図書館にいた方がいいんじゃないか?
「傘、買いに行くんですか?」
「まぁ、走って行けば大丈夫です」
一ノ瀬くんはコートの前を閉め、早速行こうとしている。
「いや、雨が止むまで待ちませんか?」
一応止めるが、一ノ瀬くんに留まる気は無い。
「佐伯さんはここで待っててください。俺は傘さして戻って来るので」
「あ……っ」
俺も行く、と言う前に、一ノ瀬くんは走り出してしまった。行動が早い。
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