アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
③
-
それからしばらく待った。
コンビニはそう遠くはないはずだが、一ノ瀬くんはなかなか戻って来ない。
もう20分だ。傘は売り切れていたのだろうか。
(動かない方がいいよな…)
ここら辺のコンビニは大体把握しているが、行き違いになったら困る。一ノ瀬くんが心配だが、待っててと言われたら俺は待っているしかない。
「一ノ瀬くん……」
まだ来ていないと分かっているが、一ノ瀬くんが向かった先の道を確認した。
(…いないか)
そしてまた前を向き直した時だった。
「……!?」
雨の中でフードを被り濡れている男と目が合う。
男は意味ありげに、にたぁと口を曲げた。
あいつは、俺の知ってる男。
俺を形成した男だ。
「なっ、で……?」
嘘だろ。なんでこんなところにいるんだよ。
「…ぁ……や、だ…っ」
こっちに気付いた男は近付いて来るのに、身体が動かない。
嫌だ。来るな。
頭ではガンガンと警鐘が鳴っている。
男は大股で俺のところまで来て、前に立ち塞がった。
「……よぉ陽裕」
「はっ、ぁ……やだっ」
忘れる訳も無い男の顔。呼び方も、声も変わらない。
もうそれ以上喋るな。嫌だ。聞きたくない。
全部全部全部、思い出す。
「ぅ…あ、はぁぁ……はっ…」
逃げろ。
動け動け動け動けっ……
「無視しないでよ?」
「…触るなっ」
腕を掴まれそうになって、やっと身体が動いた。
だが、その瞬間の男のにやついた表情を見てゾッとする。やってしまった、と後悔して距離を取った。
「へぇ……逆らうの?」
「違っ、ぁ……ッ」
駄目だ。このままこいつと一緒にいたら、気が狂う。
俺は一目散に、その場から駆け出した。屋根の下から出ると雨に濡れたが、そんなのも気にならない。
「はぁ、はぁ、ぁっ」
走って走って走って──
とにかく、今はあいつから逃げないと。
怖い。助けて。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 331