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日常①
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会議が終わり、俺は会議室から出る。
一ノ瀬くんの家に泊まった翌日から、やたら一ノ瀬くんのことばかり意識して仕方が無い。
目が合うと逸らし、身体が触れると避ける。
それは嫌な訳じゃ無くて、一ノ瀬くんを意識してしまっていることが知られたくなかったからだ。
もう、前までどうやって一ノ瀬くんと接してたのかも分からない。
俺は部署に戻り、椅子に座った。
どうして俺は、こんなに一ノ瀬くんのことばかり考えてしまうのか。
「陽裕くん」
すると、一ノ瀬くんがいない隙を狙い、また世良さんが話し掛けてくる。あんなに啖呵切ったのに、よく俺と関わる気になるもんだ。
「…なんですか」
「いやぁ、仲直りしたんだね、と思ってさ」
そのことで怒ったのに、なぜわざわざ話題を振ってくるのだろうか。
しかし、仲直りをしたと言えば仲直りはしたから、俺は素直に肯定した。
「まぁ、はい」
「羨ましいねぇ。ラブラブでしょ?」
世良さんが嬉しそうに言う。
(…そうか)
世良さんには、俺と一ノ瀬くんが付き合ってるって嘘吐いてるんだっけ。女遊びは激しいくせに、そういうところは鈍感で気付かないのだろうか。
「……違いますよ…」
一ノ瀬くんが俺の為に吐いてくれた嘘だけど、このまま世良さんを騙し続けるのも心苦しかった。
「ん?何が?」
一ノ瀬くんのデスクに座る一ノ瀬くんが、頬杖をついて首を傾げる。
一ノ瀬くんが俺に伝えてくれた気持ちは本気だった。それなのに、虚偽で付き合うなんて行為、申し訳無いと思う。
もし本当のことを言ったら、世良さんの接触は増えるかもしれないけど、仕方無かった。一ノ瀬くんの気持ちを踏み躙るようなことはしたくない。
一ノ瀬くんと付き合うのは、ちゃんと一ノ瀬くんと同じ気持ちになってからが良かった。
だから、それまでは世良さんに何をされても耐えるしかない。それを一ノ瀬くんに怒られても、理解してもらわないと。
俺は、少し間を置いて、世良さんに本当のことを言った。
「…俺と一ノ瀬くん、別に付き合ってないです……」
「………」
世良さんの表情は変わらない。
そして、
「うん。知ってたよ」
なんて衝撃の発言をされる。
俺は驚いたまま、世良さんを見詰めた。
知ってたって、知ってて色々なことを言ってきたのか、この人は。
「……どういうことですか……」
「うーん……。最初はね、陽裕くんのことは本当に可愛いなぁって思ってたんだけど、遥斗くんが陽裕くんのこと好きなんだって分かってさぁ、協力したくなっちゃったんだよねー」
ヘラヘラと本音なのかも嘘なのかも分からない言い方をされる。
そもそも、今までの態度のどこに助力したところがあったのか。
「協力って、何かしたんですか」
「陽裕くんにいっぱい関わった」
そう、にこにこ顔の世良が言う。
本当にそんな理由があって俺に触れてきたのかは疑わしい。
「オレが陽裕くんに触れてさ、陽裕くんが嫌がれば、遥斗くんは陽裕くんを守ろう!って思うわけじゃん?で、そのままゴールインって訳よ」
そのせいで一度は一ノ瀬くんとの関係が壊れかけたんだろ。
そう思うが、それがあったお陰で今の関係があるのかと思うと何も言い返せない。
「…ってことだから、遥斗くんと付き合わないなら陽裕くんのことは諦めないよ」
「…どうして……」
その時、一ノ瀬くんが部所に戻って来たのか、世良さんは俺の隣を離れた。
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