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蘇る記憶①
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あれは、夏のよく晴れた日のことだった。
空に浮かぶ雲も少なく、日差しが街行く人々を強く照らす。
「…あっつー……」
「だなー」
俺はその当時、大学の商業学部に通っていた。
元々特にやりたいことも無かった俺は、就職に強そうだと思ってその学科に行っていた。
「お前はいいよなー、可愛い彼女いんだろ?癒やしてもらえよー」
「…学科違うし会えないって」
「そういうとこが冷てぇよ!なんでお前なのかね?」
「知るかよ。あっちから告ってきたんだから」
その時は、明るく人気者の男友達がいた。
本人はそんなことを言っているが、本当は彼女のいない期間の方が短いような奴で。
「てかお前は別れたばっかだろ」
「そうなんだけどさー」
大学で初めて会ったが、この人とは結構仲が良くてよく一緒に帰っていた。
そして、今日も他愛無い話をしながら帰路につく。
すると、ぼんやりと聞こえてきた声。
何かに抵抗するような声だ。
「………めてっ…」
「?」
あの時、俺が気付かなければ。気にしなければ。
この声が、俺が男性恐怖症を患った全ての始まりだった。言わばきっかけ。
「なんだ?喧嘩か?」
「さぁねー?俺らにどうにかできる問題じゃねぇよ」
だから気にせず帰ろうと、友人は言ってくれた。
しかし、ここで俺の性分が災いしたのだ。
困っている人を見捨てられない。人の助けを無視出来ない。そう思って、俺は声のした方に駆け出した。
「おい、待てって!」
「ごめん、先帰ってて!」
俺が謝ると、友人は仕方無いなぁと言った具合に俺を止めはしなかった。それは、俺の性格を知った上での対応だった。
(…下の学年だったら適当に止めさせよう)
なんて気楽な気持ちで、走って声の方に向かう。
すると、狭い路地裏で男子高生が虐められている姿を見つけた。
制服からして高校生だ。
対して虐めているのは、うちと同じ大学の生徒だった。ひとりだけ顔を見たことがあり、確か俺より学年は1つ下のはず。
「…すみません!も、止めてくださっ……」
腕で顔などを守っているのだろうが、そんなものはやすやすと破られる。
俺は黙って見過ごすことも出来なくて、虐めている集団へと飛び込んでいった。
「何してんの?」
少年は呆けた表情で俺を見上げる。
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